日本の働き方が多様化していく中で、「スキルアップしたいがどうすればよいか分からない」「転職しようか迷っている」等、キャリアに関する悩みも幅広くなっています。
キャリアコンサルタントはそういった「キャリアの悩み」を解決する支援をする専門家で、2016年に国家資格となって以来、幅広い分野で活躍が期待されています。
本記事では人気の国家資格「キャリアコンサルタント」について、主に以下を解説していきます。
この記事で分かること
- キャリアコンサルタントとはどんな資格か
- 資格取得のための試験について
- キャリアコンサルタント資格取得の難易度
- 活躍フィールド
キャリアコンサルタントは様々な領域で活躍可能なスキルを身に着けられる資格なので、興味がある方はぜひご確認下さい。
キャリアコンサルタントとはキャリアの専門家
キャリアコンサルタントは2016年に職業能力開発促進法に規定された国家資格で、キャリアコンサルティングを行う専門家です。
キャリアに関する悩みの解決を支援するエキスパートで、転職相談や中長期的未来を見据えたキャリア設計等、幅広く「キャリアに関するお困りごと」を扱うことが求められます。
決して派手ではありませんが社会インフラの一端を担う仕事となるため、豊富な知識とスキルを求められる資格となります。
キャリアコンサルティングとは
キャリアコンサルタントの仕事内容の一つである「キャリアコンサルティング」とは、ひとことでいうと「個人のキャリアアップを支援するサービス」で、厚生労働省HPでは以下のように定義されています。
- キャリアコンサルティングとは
- 労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと
引用:厚生労働省:キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタント
具体的には、キャリアコンサルティングという「1対1の相談の場」を通して、相談者(クライアント)の人生観やワークライフバランスを理解したうえで、キャリア目標やスキルセットに合わせて、助言や指導を行います。
転職を考えている人だけではなく、現在の職場環境に悩みを抱えている人や、もしくは自分では原因の分からにモヤモヤを抱えて相談に訪れるクライアントもいます。
そのため、しっかりと傾聴をしたうえで、専門家としての見立てを立てる必要があります。
そのため、キャリアコンサルティングを行うにはキャリアに関する専門的知識だけではなく、相談者の自己理解を促したり気付きを与えられるような「カウンセリング技術」も求められます。
国家試験の受験要件でもある「キャリアコンサルティング養成講座」では、上記のようなスキルを体系的に学ぶことが出来るため、20代から50代まで挑戦可能な資格となっています。
独占業務は無い
キャリアコンサルタント資格には独占業務がありません。そのため、医者や弁護士のような「資格を持っていないと出来ない業務内容」は基本的にありません。
ただし、行政関係の業務やカウンセリングの質をウリにしているキャリア相談サービスなどは「キャリアコンサルタント資格取得者」を応募条件にしている求人もります。
そのため、働きたいジャンルによっては資格取得が就職に有利になるといえます。
また、キャリア相談サービスを副業で行う人も多く、その際には「キャリアコンサルタント資格」を保持していることが「標準レベル」の保証になるので一定の信用を得ることが出来るといえます。
キャリアコンサルタントは名称独占の資格
キャリアコンサルタントは「名称独占資格」のため、有資格者以外はキャリアコンサルタント及び紛らわしい名称を使用することは出来ません。
また、国家試験に合格していても「キャリアコンサルタント登録名簿」に登録をしなければ同様に名乗ることは出来ないので、注意が必要です。
キャリアコンサルタントの登録者数は6万人以上
2022年11月時点のキャリアコンサルタント登録者数は64,153人となっており、関東を中心(登録者の約50%)に全国各地で有資格者が登録しています。
名簿に登録されているキャリアコンサルタントは「キャリア相談」を主な業務とする方だけではなく、企業の人事・労務部門や管理職として資格学習で得たスキルを活かす方も多く、幅広い分野で活躍しています。
5年毎に更新が必要
キャリアコンサルタント資格は5年毎に資格更新が必要で、そのためには更新講習を受講する必要があります。
更新が出来なかった場合はキャリアコンサルタントを名乗れなくなるので、注意が必要です。
また、キャリアコンサルティング技能士という上位資格に合格した場合は、合格後最初の更新講習が免除されます。
そのため、スキルアップを目指したい人は積極的に技能検定合格を目指すのがオススメです。
キャリアコンサルタント試験について
キャリアコンサルタント資格を取得するためには、国家試験に合格する必要があります。
試験は基本的に年3回実施されるため、社労士等の国家資格と比較するとチャンスが多く、社会人でも挑戦しやすい資格となっています。
受験資格
キャリアコンサルタント試験は以下のいずれか一つでも条件を満たせば受験可能です。
- 厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了した方
- 労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力開発及び向上のいずれかに関する相談に関し3年以上の経験を有する方
- 技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験又は実技試験に合格した方
上記の受験資格の中でも、「厚生労働大臣の認定する講習の課程を修了」で挑戦する人が最も多く、メジャーなルートとなっています。
キャリアコンサルタント養成講座
「厚生労働大臣が認定する講習」は通称「キャリアコンサルタント養成講座」と呼ばれています。
キャリア理論やカウンセリング技法を体系的に学ぶことが出来る貴重な場であり、大半の受験生がキャリアコンサルタント養成講座を受講して国家試験に臨みます。
そのため、実務経験(3年以上)で受験可能な方でも、養成講座に通って基本を学ぶことをオススメしています。
試験の実施団体は2種類
キャリアコンサルタント試験を実施する団体は以下の2種類で、自身の好きな方で受験することが可能です。
- 日本キャリア開発協会(JCDA)
- キャリアコンサルティング協議会
上記の2団体のどちらを選んでも学科試験(筆記試験)の内容は全く同じですが、実技試験である論述試験・面接試験(ロープレ試験)の内容や評価項目が変わるため、注意が必要で。
キャリアコンサルタント試験の難易度
キャリアコンサルタントの試験内容は、そこまで難しいものではありません。
資格・技能検定 | レベル基準 | 難易度 |
---|---|---|
キャリアコンサルティング技能士1級 | 指導者レベル | かなり難しい |
キャリアコンサルティング技能士2級 | 熟練レベル | 難しい |
キャリアコンサルタント国家資格 | 標準レベル | 普通 |
キャリアコンサルティングに関わる資格は上記の3種類があり、国家資格である「キャリアコンサルタント」に求められるレベルはあくまで「標準レベル」となっています。
国家試験にも関わらず年に3回も試験に挑戦するチャンスがあることも、難易度が難しくに要因の一つです。
合格率は50%以上
キャリアコンサルタント試験の合格率は概ね50~60%程度を推移しており、この数字からもそこまで難しい試験ではないことが分かります。
ただし、稀に合格率が大きく下がる試験回があるので、確実に合格を目指すには徹底した試験対策が必要になります。
独学受験は合格率が低い
実務経験が3年以上ある場合は、養成講座に通わなくてもキャリアコンサルタント試験に挑戦することが出来ますが、個人的にはオススメできません。
キャリアコンサルタントにも求められる知識と技能の幅は広く、経験があっても偏ったスキルになりがちです。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
養成講座修了 | 3,822人 | 2,086人 | 54.6% |
実務経験 | 444人 | 158人 | 35.6% |
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
養成講座修了 | 4,507人 | 3,049人 | 54.6% |
実務経験 | 520人 | 247人 | 47.5% |
また、「実務経験受験者」は養成講座を修了した受験生と比較すると合格率が低く(上表参照)なっています。
要因としては養成講座のように体系的にキャリア理論やカウンセリングスキルを学ぶことが独学では難しいことが挙げられます。
特に実技試験の対策で一般的な「ロープレ練習」については、スクールに通っていないとクライアント役を見つけるのが難しく、独学での試験対策を困難にしている要因の一つといえます。
キャリアコンサルタント養成講座(厚生労働大臣認定の講習)
キャリアコンサルタント試験に挑戦する場合、最も多い受験資格は「厚生労働大臣が認定する講習を修了」して臨むケースです。
これは通称「キャリアコンサルタント養成講座」と呼ばれており、受験生の9割近くが養成講座を修了して国家試験に臨んでいます。
専門実践教育訓練給付金で受講料の最大70%が支給!
キャリアコンサルタント養成講座の受講料金は大体30~40万円程度の費用が必要になります。
かなり高額な講座といえますが、厚生労働省管轄の助成金である「専門実践教育訓練給付金」を利用すれば、最大で受講料金の70%の支給を受けることが出来ます。
そのため、自己負担額をより抑えて受講するには「専門実践教育訓練給付金」の対象となっているスクールを選んで受講するのがオススメです。
この給付金はすべてのスクールで使えるわけではないので、注意が必要です。
主な活躍フィールド
キャリアコンサルタントは広い分野で活躍が期待されており、企業内のキャリアコンサルティングや企業の人事部門だけでなく、公的機関での相談員等、様々なフィールドでの活躍が期待されています。
キャリアコンサルタントの活躍フィールド
- 公的機関での相談員
(ハローワークや若者自立支援機関) - 人材派遣会社や人材紹介会社のキャリアアドバイザー
- 大学や専門学校内のキャリアセンター
- 刑務所内の就労支援員
- 障害者施設の支援スタッフ
- 企業内キャリアコンサルタント
- フリーランスのカウンセラー
キャリアコンサルタントには「独占業務」はありませんが、その有資格者には「キャリアに関する広い知識」「傾聴やカウンセリングの技法」のスキルが期待されています。
そのため、これらのスキルが求められる求人には「必要資格」「あると望ましい資格」として記載されることが多くなっています。
また、ハローワーク等の公的機関では資格を取得することが昇給やキャリアアップの条件となる場合もあります。
そのため、すでに上記のような仕事をしている方もスキルアップのためにキャリコン資格取得を目指す方が多くなっています。
有料のキャリア相談という市場
転職活動の際にはハローワーク等の公的機関や転職エージェントに相談するのが一般的です、「転職したいかどうか決まっていない」「今の職場での問題を解決したい」という方向けに「有料のキャリア相談サービス」が増えてきています。
「有料キャリア相談サービス」はここ数年で市場規模を拡大しており、日本のキャリア教育が進むことでその需要も高まっていくと予想されます。
こういったキャリア相談サービスでも「キャリアコンサルタント」の資格を持っている方が活躍することが多く、今後の動向に注目したい業界となっています。
副業として活動する
キャラコンサルタント資格の活かし方の一つとして「副業でキャリア相談を行う」という方法があります。
「現在の職場では資格を生かす場は作れない」「少しでもキャリア相談の仕事をしたい」と考えている方は副業として資格を活かすのがオススメです。
副業でキャリアコンサルタント資格を活かしたい方は以下の記事でおすすめのサービスを紹介しているので、是非ご確認ください。
キャリアコンサルタントの年収
キャリアコンサルタント資格者の年収は200万円~1,000万円まで幅広く、その活動内容や所属企業に大きく左右されます。
年収 | 割合(%) |
無し | 2.2% |
100万円未満 | 3.4% |
100~200万円未満 | 6.1% |
200~300万円未満 | 13.8% |
300~400万円未満 | 16.5% |
400~500万円未満 | 14.5% |
500~600万円未満 | 11.1% |
600~700万円未満 | 8.0% |
700~800万円未満 | 6.5% |
800~900万円未満 | 4.7% |
900~1000万円未満 | 3.8% |
1000万円以上 | 9.4% |
参照:労労働政策研究報告書No.227第2回キャリアコンサルタント登録者の活動状況等に関する調査
上表は「労働政策研究報告書」の調査結果となっており、これを見ると年収200~400万円、400~600万円の送が割合として最も多いことが分かります。
キャリアコンサルタントの収入は、所属組織や働き方(フルタイム・パートタイム)の影響も受けるので、興味がある方は以下の記事で詳細をご確認ください。
スキルアップしたい人におすすめの資格
キャリアコンサルタント資格を目指す方の中には、「資格取得後のスキルアップ方法を知りたい!」という方も多いようです。
キャリアコンサルタント資格は「標準レベルのキャリアコンサルタント」と定義されており、実務経験と自己研鑽を通して専門性を身に着け、スキルアップしていくことが求められています。
ここでは、キャリアコンサルタントのスキルアップに役立つおすすめ資格をご紹介します。
キャリアコンサルティング技能検定
キャリアコンサルティング技能検定はキャリアコンサルタントの上位資格にあたり、スキルアップの課程で合格を目指すのがオススメです
- キャリアコンサルティング技能検定2級:熟練レベル
- キャリアコンサルティング技能検定1級:指導者レベル
技能検定はそれぞれ上表のように求められるレベル感が定義されており、実務で求められるレベルと期待される役割に応じて、上位資格の取得を目指すのが良いでしょう。
社会保険労務士
社労士は社会保険や労働関連の法律の専門家で、社会保険労務士法第2条で定められている独占業務があるため、独立開業も可能な資格です。
そのため、キャリアコンサルタントと相性の良い国家資格となっており、ダブルライセンスで取得を目指す方が多い資格の一つです。
公認心理師
キャリアコンサルタントはとても広い分野での活躍が可能ですが、中でも「こころの健康に寄り添ったキャリアコンサルティング」を行いたいと考えている方には「公認心理師」の資格がオススメです。
公認心理師は「心の支援が必要な方の観察や分析、援助を行う専門家」であり、キャリアコンサルタント「福祉業界」「行政機関」で活動する際には非常に役立つ知識・スキルを得ることが出来ます。
ただし、誰でも国家試験を受験できるわけではないので、気になる方は下記の記事より詳しい受験資格などをご確認ください。
メンタルヘルス・マネジメント検定
メンタルヘルス・マネジメント検定は大阪商工会議所が実施する公的資格で、職場でのメンタルヘルスに関する知識や正しい対処法を身に着けることが出来る資格です。
検定は目的に応じてⅠ種からⅢ種まで用意されており、自身の役割に合わせて学習をすることが可能です。
コース | Ⅰ種(マスターコース) | Ⅱ種(ラインケアコース) | Ⅲ種(セルフケアコース) |
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対 象 | 人事労務管理スタッフや経営幹部 | 管理監督者 (管理職・役職者) | 一般社員 |
目 的 | 社内のメンタルヘルス対策の企画・推進 | 主に部下のメンタルヘルス対策の推進 | 従業員が自分自身のメンタルヘルス対策の推進 |
公認心理師と違って誰でも挑戦可能な資格となっているので、メンタルヘルス領域に興味がある方は、キャリアコンサルタントと併せて取得するのがおすすめです。
「らしく働く」を支援するキャリアコンサルタント
労働者がイキイキとその人らしく働くことを支援するのが、キャリアコンサルタントの役割です。
キャリアコンサルティングという場を通して相談者の課題を整理し、必要な助言や情報提供を行い、課題解決をに伴奏するのが仕事の一つといえます。
労働市場のインフラの一つといえるキャリアコンサルタントの活躍フィールドは非常に広く、やりがいのある仕事です。
興味がある人は、仕事内容や資格取得のイメージを具体的にするためにも、まずはキャリアコンサルタント養成講座ので説明会等に参加するのがおすすめです。