転職エージェントや人材派遣会社のキャリアアドバイザー(通称:CA)は、無資格・未経験でも就職可能な職種ですが、適切な資格を取得することで体系的なスキルを身につけ、日々の業務や転職の際に活かすことが可能になります。
本記事では、キャリアアドバイザーにおすすめの資格や身につけるべきスキル、おすすめのキャリアコンサルタント養成講座について解説していきます。
キャリアアドバイザーに資格取得がおすすめの理由
キャリアアドバイザーとして求職者の支援を行っている方の中には、「もっと本質的な支援がしたい」「成果を出せるアドバイザーになりたい」と感じている方も多いのではないでしょうか。
そんな方にこそおすすめしたいのが、国家資格である「キャリアコンサルタント」をはじめとした資格の取得です。
キャリアアドバイザーに資格取得がおすすめの理由は以下の通りです。
それぞれ詳しく解説していきます。
正しいスキルと知識を身につけられる
キャリアアドバイザーは、無資格・未経験でも挑戦できる職種でありながら、求職者の「転職」という人生の大きな転機に深く関わる重要な役割を担っています。
ですが、人材業界では「現場で学ぶ」ことを重視する企業も多く、未経験で入社した場合、OJTを通じて実務を覚えることが一般的です。
その結果、自己流のキャリア支援に偏ってしまい、「自分の支援は本当にこれで良いのか」と正解が見えなくなっているキャリアアドバイザーも少なくありません。
そこで、キャリア支援に役立つ資格を取得し、正しい知識やスキルを体系的に学ぶことが大切になります。
資格を通じて理論と実務を結びつけることで、キャリアアドバイザーとしてより的確な判断ができるようになり、支援の質も大きく向上するでしょう。

キャリアアドバイザーは、関わる求職者の転職の成否や、その後のキャリアに大きな影響を与える責任の重い仕事です。
だからこそ、キャリア支援に携わる以上は、最低限の知識やスキルを身につけたうえで業務に取り組むことが非常に重要だと考えています。

その第一歩として、キャリアコンサルタントの資格が特にオススメです、資格取得に必要な養成講座の受講を通して、キャリアアドバイザーに必要な理論やスキルを体系的に学ぶことができます。
本質的なキャリア支援ができるようになる
キャリアアドバイザーの人が資格を取得することで、より「本質的なキャリア支援」が可能になります。
例えば、キャリアコンサルタントの資格取得に必要な養成講座では、「来談者中心カウンセリング」に基づく傾聴スキルや、「マイクロカウンセリング」と呼ばれる体系的なカウンセリング技法を学びます。
これにより、希望条件をヒアリングして求人を紹介するだけの表面的な対応ではなく、「その人らしいキャリア選択」を導くことが可能になります。
また、キャリアコンサルタント資格では、養成課程の中でさまざまな「キャリア理論」を学ぶ機会があります。
そのため、求職者が抱える「転職したい理由」の背後にある本質的な課題や悩みにも気づきやすくなり、より的確で深い助言ができるようになるでしょう。

本来、キャリア支援において最も重要なのは、「転職」という表面的なニーズに応えることではなく、その背後にある「本質的な悩み」の解決に寄り添うことです。
しかし、多くの人材会社では、たとえ社員研修に力を入れていたとしても、「いかにマッチングを成功させるか」といった売上に直結する手法に偏りがちで、真の意味でのキャリア支援は後回しにされる傾向があります。

だからこそ、求職者の人生にとって本当に価値のある支援を提供するためには、「転職成功による売上」と「求職者へのキャリア支援」の両立を目指し、自分自身がそのためのスキルを主体的に身につけていくことが不可欠といえるでしょう。
>キャリアアドバイザー面談のコツ!来談者中心カウンセリングとは?
成果を出しやすくなる
資格取得を通し、体系的なカウンセリング技法、およびキャリア理論に関する知識を身につけることで、キャリアアドバイザーとして成果も出しやすくなる点が大きなメリットの一つです。
キャリアコンサルタントの養成講座では、理論に基づいたキャリアコンサルティングの技法を体系的に学ぶことができます。これにより、相談者が口にする主訴(表面的な悩み)だけでなく、その背後にある本質的な課題や潜在的なニーズを把握しやすくなります。
その結果、より的確な助言ができるだけでなく、本人も気づいていないような適切な求人を提案することも可能になるでしょう。
また、国家資格を取得することで、求職者に対して「信頼できる専門家」としての印象を与えることができ、面談満足度の向上にもつながります。

キャリアコンサルティングに関する理論やスキルを習得しているかどうかにより、転職支援の精度や再現性に大きな差が出ます。
経験に頼るだけでなく、確かな知識で裏打ちされた支援こそが「成果の出るキャリア支援」と言えるでしょう。

私自身、転職エージェントでキャリアアドバイザーとして業務に携わっていた際、キャリアコンサルタント資格を取得したことで、社内でも上位の成果を出すことができました。
また、資格取得を通じて習得したカウンセリング技法をもとに社内の面談マニュアルを作成したことで、他のキャリアアドバイザーの支援スキル向上や売上改善にも寄与できたと考えています。
転職に有利になる
キャリアアドバイザーとしての経験を積んでいくと、ゆくゆくは人材業界内での転職を考える場合もあるでしょう。
その際に、キャリアコンサルタントの資格を取得しておくことで、他社への転職活動時においても「有資格者」として明確なアピールポイントになります。
最近では、求人票に「キャリアコンサルタント有資格者歓迎」と記載されているケースも増えており、市場価値の高い人材として評価されやすくなっています。
また、客観的なスキル・知識の証明にもなるため、自身のキャリアアップや転職活動においても大きな武器となるでしょう。

実務経験に加えて、国家資格という明確なスキル証明を持つことで、人材業界に限らず、「人事」や「大学のキャリアセンター」、「公的キャリア支援機関」など、キャリア支援業界全般の転職において有利になるといえるでしょう。
キャリアアドバイザーにおすすめの資格5選
キャリアアドバイザーとしての専門性を高め、より本質的なキャリア支援と会社が求める成果の両立を目指したい場合、また支援者としての信頼性を高めたい場合には、資格の取得が非常に有効です。
キャリアアドバイザーにおすすめの資格は以下の通りです。
資格 | 資格の種類 | 取得難易度 |
キャリアコンサルタントおすすめ! | 国家資格 | 普通 |
産業カウンセラー | 民間資格 | 普通 |
衛生管理者 | 国家資格 | 簡単 |
メンタルヘルス・マネジメント検定 | 民間資格(大阪商工会議所が主催) | 簡単 (Ⅰ種~Ⅲ種によって異なる) |
社会保険労務士 | 国家資格 | 難しい |
キャリアアドバイザーに最もおすすめな資格としては、カウンセリング技法やキャリア理論をバランスよく学べる「キャリアコンサルタント」です。
現代のキャリア支援現場では、転職・就職支援にとどまらず、メンタルケアや労働トラブルなど、幅広い領域に対応できるスキルが求められています。
そうした中で、専門領域に特化した資格を取得することで、より高いレベルで活躍できる場が広がっていくでしょう。
キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントは、職業能力開発促進法に基づいて定められた、キャリア支援の専門家としての国家資格です。
国家試験を受験するには、原則として150時間に及ぶ「厚生労働大臣認定の養成講習」を修了する必要があります(※)。
この講習では、カウンセリングスキルやキャリア理論、労働市場の理解、労働関係法令の知識などをバランスよく学ぶことができます。
養成講習の受講と国家試験対策を通じて、求職者の職業選択や職業生活設計に関する相談に対応できる実践的なスキルと知識を身につけることができるため、キャリアコンサルタント資格は、キャリアアドバイザーにとって最もおすすめの資格といえるでしょう。
特に、「ただ求人を紹介するだけではなく、もっと本質的な支援をしたい」と感じている方にとっては、理論と実践の両面を体系的に学べるこの資格は、まさに最適な選択といえるでしょう。

※キャリア支援業務の実務経験が3年以上あれば、養成講習を受講せずにキャリアコンサルタント試験に挑戦することも可能です。
ただし、試験対策だけでなく、カウンセリング技法やキャリア理論を体系的に学ぶという点では、養成講習の受講をおすすめします。実践と理論の両面からスキルを磨くことで、より質の高いキャリア支援ができるようになるでしょう。
資格名 | キャリアコンサルタント |
資格の種類 | 国家資格 |
資格概要 | キャリアコンサルティングの専門家 |
取得難易度 | 普通 |
試験の合格率 | 50~60% |

キャリアコンサルタント資格は、国家資格としての信頼性があるだけでなく、講座で学ぶカウンセリング技法やキャリア理論が実務に直結している点も大きな魅力です。
資格取得を通じて、これまで感覚的に行っていた面談や求人提案の背景にある理論や支援の意義を体系的に理解できるようになり、面談の質が向上します。

その結果、転職希望者の満足度を高められるだけでなく、自社の売上アップにも貢献できるようになるでしょう。
キャリアコンサルタントの取得難易度
キャリアコンサルタントは、他の国家資格と比較すると取得のハードルはそれほど高くなく、比較的チャレンジしやすい資格といえます。
実際、キャリアコンサルタント試験の合格率は概ね50〜60%程度で推移しており、試験も年に数回実施されます。また、学科・実技のいずれかに合格すれば次回試験で免除される「科目合格制度」もあるため、合格しやすい仕組みも整っています。
試験回 | 合格率 |
---|---|
第27回 | 50.4% |
第26回 | 50.7% |
第25回 | 51.7% |
とはいえ、受験には原則150時間におよぶ厚生労働大臣認定の「キャリアコンサルタント養成講座」を修了する必要があることに加え、そのうえで毎回およそ半数が不合格になるという現実を考えると、決して「簡単に取れる国家資格」ではありません。
確実に合格を目指すためには、養成講習の受講に加え、自主的な学科試験対策やロールプレイ練習などが不可欠といえるでしょう。
キャリアアドバイザー業務におけるキャリアコンサルタントの活かし方
には転職支援に役立つ各種キャリア理論を体系的に学ぶことができ、日々の面談業務の質向上に大いに役立ちます。
また、名刺やプロフィールに「国家資格キャリアコンサルタント保持者」と明記できるため、信頼性の高いキャリアアドバイザーとして他者との差別化にもつながります。
ただし、学んだカウンセリング技法や理論を実践で使いこなすには一定の時間と経験が必要です。そのため、資格取得後も継続的な実践や更新講習を通じて、自己研鑽を続けていく姿勢が求められます。

キャリアアドバイザーにとって、キャリアコンサルタント資格は「信頼性」と「専門性」の証です。
表面的な求人紹介にとどまらず、人生に一歩踏み込んだ支援をするためには必須ともいえるスキルを身につけることができます。
産業カウンセラー
産業カウンセラーは「一般社団法人日本産業カウンセラー協会」が認定する民間資格で、職場で生じる人間関係やメンタルヘルスの問題に対して、心理的アプローチを用いて支援する専門職です。
資格取得のために受講が必要になる「産業カウンセラー養成講座」では、傾聴や自己理解の支援を中心に、「聴く力」を徹底的に鍛えるカリキュラムが特徴です。
参照:一般社団法人産業カウンセラー協会「産業カウンセラー養成講座」
キャリアアドバイザーとして求職者の不安や悩みに寄り添う場面は多く、単に求人情報を提供するだけでは解決できないケースも少なくありません。
そうした中で、産業カウンセラーの資格を取得していれば、「心の課題」やメンタル面の問題にも適切に対応できるようになり、相談者との信頼関係をより深めることが可能になります。

産業カウンセラーは「傾聴スキルを高めたい」「求職者のメンタル不調に寄り添う支援がしたい」というキャリアアドバイザーの方におすすめの資格です。
産業カウンセラーの取得難易度
産業カウンセラーの資格取得難易度は高くないものの、受験のためには原則として30万円以上の受講料が必要な「産業カウンセラー養成講座」の受講が必要になるため、経済的なハードルはやや高い資格といえます。
参照:一般社団法人産業カウンセラー協会「産業カウンセラー試験」
試験科目 | 合格率 |
---|---|
学科試験 | 75.2% |
実技試験 | 60.0% |
総合合格 | 65.9% |
ただし、2024年度試験の総合合格率は65.9%(上表を参照)と高く、養成講座を修了すれば試験合格は決して難しくはないでしょう。
キャリアアドバイザー業務における産業カウンセラーの活かし方
キャリアアドバイザーとして働く上で、産業カウンセラーの知識とスキルは大きな強みになります。特に、傾聴を中心としたカウンセリング技法は、求職者の本音や不安を引き出す場面で非常に有効です。
たとえば、求職者に迷いや葛藤がある場合でも、傾聴スキルを活かして話を深掘りすることで、真の課題にたどり着くことができます。
また、メンタル不調や職場の人間関係に悩む相談者に対しても、心理学の専門的な知識をもって対応できるため、信頼関係の構築がスムーズになるでしょう。
ストレスや人間関係、職場の悩みを抱える求職者に対し、より深い心理的支援ができるようになります。また、企業のメンタルヘルス研修や復職支援の場でも活躍の幅が広がります。

キャリア支援においては、スキルのマッチングだけでなく、「心のケア」も非常に重要な要素です。
産業カウンセラーとしての知識やスキルは、相談者の本音を引き出し、深い信頼関係を築くうえで大きな力を発揮します。

ただし、「傾聴」をベースにしたカウンセリングスキルはキャリアコンサルタントの養成講座でも学ぶことが可能です。
そのため、自分がどのような場面でスキルを活かしたいのか、自身の目的やキャリアに応じて、最適な資格を選ぶことが大切です。
>心理カウンセラー資格は「意味ない」「役に立たない」って本当?
衛生管理者
衛生管理者は、一定規模以上の事業所(時50人以上の従業員が働く事業場)に配置が義務づけられている国家資格者で、労働者の健康と安全を守る役割を担います。第一種・第二種に分かれており、製造業や医療・建設分野など幅広い業界でニーズがあります。
資格取得を通して労働衛生や関係法令について学ぶことができるため、キャリアアドバイザーが衛生管理者資格を持っていれば、労働環境に関する相談を受けた際に、より的確なアドバイスが可能になります。
また、転職者が職場環境に不安を抱えている場合、法令に基づいた情報を提供できるのは大きな強みです。

衛生管理者資格は、職場環境や安全衛生に関する知見を深めるのに最適です。キャリア支援において「働く環境」にまで踏み込んだ提案をしたいキャリアアドバイザーの方には特に役立ちます。
衛生管理者の取得難易度
衛生管理者は受験資格である一定の実務経験さえ満たせば、だれでも挑戦できる資格です。
養成講座の受講などは不要で、筆記試験のみで受験できることに加え、試験合格率は50%前後となっているため、比較的簡単に取得できる国家資格といえるでしょう。
資格 | 合格率 |
---|---|
第一種衛生管理者 | 46.3% |
第二種衛生管理者 | 49.8% |
キャリアアドバイザー業務における衛生管理者の活かし方
キャリアアドバイザーとして働く中で、衛生管理者の資格は大きなアドバンテージとなります。
特に、働く環境や健康リスクへの関心が高まる現代では、求職者に対して職場の衛生・安全面について具体的なアドバイスができる点は信頼性につながります。
ただし、面談そのものの質を向上させるようなカウンセリングスキルを学べる資格ではないため、キャリアアドバイザーとしてのスキルアップが目的であれば、まずはキャリアコンサルタントの資格取得を検討する方がいいでしょう。

私自身も、キャリアアドバイザーとして働いていた当時に衛生管理者の資格を取得しました。その際、試験対策を通じて、最低限の労働関係法令を体系的に学ぶことができたのは大きな収穫でした。
衛生管理者は、費用や学習時間の負担も比較的少なく、キャリアの専門家としての「第一歩」を踏み出したい方にとって、おすすめの資格といえるでしょう。
メンタルヘルス・マネジメント検定
メンタルヘルス・マネジメント検定は、働く人々の心の健康管理について体系的に学べる民間資格であり、目的に応じて選べる3つのコースが用意されています。
具体的には、企業全体のメンタルヘルス対策を担う「Ⅰ種(マスターコース)」、管理職向けの「Ⅱ種(ラインケアコース)」、そして従業員自身のセルフケアを目的とした「Ⅲ種(セルフケアコース)」があります。
キャリアアドバイザーとして日々求職者と面談をする中で、「仕事のストレスがつらい」「職場の人間関係に悩んでいる」といったメンタル面の相談を受けることは決して珍しくありません。
メンタルヘルス・マネジメント検定の試験対策を通じて、ストレス反応の見極め方やセルフケアの方法、適切な相談窓口の紹介といった対応力を養うことで、今の職場環境に悩んでいる求職者に対しても、より安心感のある支援を提供できるようになります。

メンタル不調による休職や退職が社会課題となる中、キャリア支援にも「メンタルヘルスの視点」が不可欠です。
メンタルヘルス・マネジメント検定は手軽に学べて実務にも活かしやすい検定ですので、キャリアアドバイザーが最初に取得する資格としておすすめです。
メンタルヘルス・マネジメント検定の取得難易度
大阪商工会議所が実施する検定試験で、Ⅰ種(マスター)、Ⅱ種(ラインケア)、Ⅲ種(セルフケア)の3段階があります。
特にⅡ種は管理職や支援職に人気で、合格率は60〜70%前後と比較的取得しやすい資格です。
資格 | 合格率 |
---|---|
Ⅰ種 | 20.9% |
Ⅱ種 | 60.5% |
Ⅲ種 | 74.3% |
特に受験資格はなく、だれでも挑戦できる検定のため、「メンタルヘルスの体系的な知識が欲しい」という人におすすめの資格です。
キャリアアドバイザー業務におけるメンタルヘルス・マネジメント検定の活かし方
求職者の中には、転職や就業に対する不安、職場での人間関係の悩み、過去のストレス体験など、精神的な課題を抱えている人も少なくありません。
そのため、キャリアアドバイザーの方がメンタルヘルス・マネジメント検定で得られる知識を活かすことで、そうした相談者に対して心理的な配慮を持った対応ができ、信頼関係の構築につながります。
また、両面型エージェントの場合は、企業の労働環境やメンタルヘルス対策の観点から求人の選定やアドバイスができるようになり、ミスマッチの防止にも役立てられるでしょう。

最低限のメンタルヘルスに関する知識を身につけておくことで、求職者との面談においてストレスや不安への配慮ができるようになり、より質の高い支援につながります。
ただし、実際の面談の中でこうした知識を的確に活かすためには、「カウンセリングスキル」の習得が欠かせません。

メンタル面への理解と実践的なスキルの両方を身につけたいと考えている方には、「キャリアコンサルタント」資格の取得もあわせて検討することをおすすめします。
社会保険労務士
社会保険労務士は社会保険労務士法に基づいた国家資格であり、労働・社会保険の分野に精通した労務管理の専門家です。
資格取得の過程で、各種の労働関係法令について学ぶことができるため、キャリアアドバイザーにとっては、雇用契約・労働条件・退職手続きなど、法的な不安を抱える求職者への支援が強化される点が最大の魅力です。
特に、人材派遣会社の両面型担当者(キャリアアドバイザーとリクルーティングアドバイザーを兼任)や、派遣元責任者として働いている人におすすめの資格です。

キャリア支援の現場において、労働法や社会保険制度に基づいたアドバイスができる人材は非常に希少であり、社会保険労務士(社労士)は独立開業や法人向け支援などにもつながる、将来性の高い有望な資格です。

ただし、キャリアアドバイザーとして日々の面談業務のみに従事している方にとっては、社労士はややオーバースペックな資格といえるかもしれません。
資格取得を目指す際は、将来的なキャリアの方向性も踏まえて検討することが必要になります。
社会保険労務士の取得難易度
国家資格であり、合格率は例年6~7%と非常に低く、国家資格の中でも難関試験と言えるでしょう。
試験回 | 合格率 |
---|---|
第56回 | 6.9% |
第55回 | 6.4% |
第54回 | 5.3% |
社労士試験は、労働関係法令や社会保険、年金など幅広い分野が試験範囲となるため、試験勉強に慣れていない人が一発合格を目指すのは難しい試験といえるでしょう。
キャリアアドバイザー業務における社会保険労務士資格の活かし方
キャリアアドバイザーとして働くうえで、社会保険労務士(社労士)の資格は非常に強力な武器になります。
労働法や社会保険制度に関する専門的な知識を活かすことで、求職者に対してより具体的かつ実務的なアドバイスが可能となり、信頼性の高いキャリア支援につながります。
また、企業側とのやり取りにおいても、採用から定着までの支援プロセスに専門性を持って関与できるため、信頼を得やすくなり、マッチングの精度向上にも貢献できるでしょう。
特に、人材派遣会社で「派遣元責任者」として働いている方にとっては、社労士資格の学習で得た労務管理や契約実務の知識が、現場でダイレクトに活かせるといえるでしょう。

「いずれは独立したい」「人事の労務部門で働きたい」と考えている方にとって、社会保険労務士(社労士)の資格は非常に有用で、キャリアの幅を大きく広げることができます。

ただし、通常のキャリアアドバイザー業務においては、「キャリアコンサルタント」資格の取得過程で学べる労働法や関連法令の基礎知識で十分対応できるケースが多いため、まずは自身のキャリアプランに合わせて資格取得を検討することが重要になります。
キャリアアドバイザーが身につけるべきスキルと知識
キャリアアドバイザーとして活躍するためには、求人紹介スキルだけでなく、求職者の適切な意思決定を支援するための専門的な知識やスキルの習得が不可欠です。
昨今の転職支援では、表面的なヒアリングやマッチングだけでなく、相談者の価値観・キャリア観に深く寄り添った「本質的な支援」が求められています。
- カウンセリング技法
- キャリア理論
- 労働関係法令に関する知識
それぞれ詳しく解説していきます。
体系的なカウンセリング技法
キャリア支援・転職支援において、最も基本かつ重要なのが、「傾聴」を軸としたカウンセリング技法です。
求職者に単に求人情報を提供するのではなく、まずはしっかりと話を聴き、感情・価値観・職業観といった深層部分を理解したうえで、自己理解と意思決定を支援する姿勢が求められます。
具体的には、「受容」「共感」「自己一致」の3要素から成る「来談者中心カウンセリング」や、カウンセリングのメタモデルである「マイクロカウンセリング技法」などを学ぶことで、日々の面談業務の質を大きく高めることが可能です。
これらのカウンセリング技法は、キャリアコンサルタント養成講座で体系的に学ぶことができるため、資格を取ってスキルアップしたいキャリアアドバイザーの人は受講を検討するといいでしょう。

カウンセリング技法は、実務経験だけでは身につけにくい「型」としての技術です。
自己流で転職支援を続けていると、求職者の本音をうまく引き出せず、面談の質にばらつきが出てしまうことも少なくありません。

だからこそ、体系的にカウンセリング技法を学ぶことで、状況に応じた適切な対応ができる「再現性のある面談スキル」を習得することが可能になります。
キャリア理論
キャリア理論は、相談者のキャリア形成を理解・支援するため必要な体系的な知識です。
たとえば、クランボルツの計画的偶発性やスーパーのライフキャリアレインボーなどは、現代の多様なキャリア観を理解する上で重要なフレームワークとなります。
キャリア理論を身につけておくと、相談者が抱える漠然とした不安や葛藤を理論的に整理でき、より納得感のある支援につなげることができます。また、年齢やライフステージ、就業経験に応じた適切な支援が可能になるのも大きなメリットといえるでしょう。
基本的なキャリア理論はキャリアコンサルタント養成講座で学ぶことができるため、国家資格取得を検討している人の場合、特に身につけておきたいスキルといえるでしょう。

さまざまなキャリア理論を理解することで、年齢や職種、価値観の異なる幅広い求職者への対応力が高まります。
自己流の経験則だけに頼るのではなく、体系的なキャリア理論に基づいた助言を行うことで、より本質的で信頼性の高いキャリア支援が可能になるでしょう。
労働関係法令
キャリア支援に携わるうえで、労働基準法・雇用保険法・労働契約法といった、基本的な労働関係法令の知識は欠かせません。
就業条件や退職時のトラブル、有給休暇の取得、契約形態の違いなど、面談の場では法的な質問を受けることも多くあります。
特に、人材派遣会社で働くキャリアアドバイザーや、求職者対応と企業対応を兼任する両面型の担当者にとっては、派遣スタッフの労務管理を行う際に、労働法の正しい理解が不可欠です。
また、法令知識があれば、企業と求職者の間で不利益が生じそうな場面でも、客観的かつ的確なアドバイスが可能になります。
おすすめのキャリアコンサルタント養成講座
本記事で紹介した5つの資格の中でも、カウンセリング技法やキャリア理論などのすぐに使えるスキルを学べる「キャリアコンサルタント」は、最もキャリアアドバイザーにおすすめの資格です。
キャリアコンサルタントの国家試験を受験するためには、3年以上の実務経験か、もしくは厚生労働大臣認定の講習(通称:キャリアコンサルタント養成講座)の修了が必要です。
ここからは、以下のおすすめキャリアコンサルタント養成講座について解説していきます。

実務経験がある人でも、スキルアップのためには養成講座で体系的に学ぶことがおすすめです。
ヒューマンアカデミー

運営会社 | ヒューマンアカデミー株式会社 |
受講スタイル | ・オンライン ・通学 どちらも選択可能 |
受講料 | 355,300円(税込み) ※別途入学金55,000円(税込み) |
対象の給付金・補助金 | 専門実践教育訓練給付制度 ※受講料の最大80%が支給 |
公式サイト | https://haa.athuman.com/academy/career/ |
キャリアコンサルタント資格を取得して専門性を高めたいキャリアアドバイザーには、ヒューマンアカデミーの養成講座がおすすめです。
最短3ヶ月で国家資格の受験資格を得ることができ、通学・オンラインの両方に対応しているため、忙しい社会人でも自分のライフスタイルに合わせて学習を進められます。
また、社会人教育に強みを持つ大手スクールであるヒューマンアカデミーならではの実践的なカリキュラムにより、理論だけでなく現場で使えるスキルも効率的に習得できます。
全国の主要都市に校舎があるため、「対面でカウンセリング技法をしっかり身につけたい」という方にも特におすすめの養成講座です。

ヒューマンアカデミーの講師は上位資格である「キャリアコンサルティング技能士」保持者であることに加え、スタッフの多くもキャリアコンサルタント資格を保有しているため、学習中に不安や悩みが生じた際にも、安心して相談できる環境が整っています。
- 対面でキャリアコンサルティングを学びたい人
- 大手スクールで体系的に学びたい人
- 事前に受講に関する相談をしたい人
【無料】まずは説明会を予約
一般社団法人地域連携プラットフォーム

運営会社 | 一般社団法人地域連携プラットフォーム |
受講スタイル | オンラインのみ |
受講料 | 297,000円(税込み) |
対象の給付金・補助金 | 専門実践教育訓練給付制度 ※受講料の最大80%が支給 |
公式サイト | https://careerjp.work/cc1/ |
仕事が忙しい方や、できるだけ短期間で受験資格を取得したい方には、一般社団法人地域連携プラットフォームのキャリアコンサルタント養成講座がおすすめです。
本講座はオンライン完結型で全国どこからでも受講でき、最短1.5カ月の集中コースから、3カ月の標準コースまで、ライフスタイルに合わせて柔軟に選べるカリキュラムが用意されています。
また、受講料は297,000円(税込)と非常に良心的で、他のスクールと比較してもリーズナブルな価格帯となっています。
さらに、講座修了後にはキャリアコンサルタントとしてのブランディング支援や独立開業サポートも提供されており、資格取得後のキャリア形成を後押ししてくれる点も大きな魅力です。

一般社団法人地域連携プラットフォームでは、通学(対面)ではなく、オンラインによる受講コースのみを開講しており、その分コストを抑えたリーズナブルな受講料で学ぶことができます。

そのため、「できるだけ受講料を抑えたい」「最短・最速でキャリアコンサルタントの受験資格を取得したい」という方に特におすすめのスクールです。
自宅から無理なく受講できるため、仕事や家庭と両立しながら効率的に学びたい方にもおすすめのスクールです。
- できるだけ安価に受講したい人
- オンラインでキャリアコンサルティングを学びたい人
- 最短でキャリアコンサルタント養成講座を修了したい人
【無料】説明会の参加予約はこちら!
日本マンパワー

運営会社 | 株式会社日本マンパワー |
受講スタイル | ・オンライン ・通学 どちらも選択可能 |
受講料 | 396,000円(税込) |
対象の給付金・補助金 | 専門実践教育訓練給付制度 ※受講料の最大80%が支給 |
公式サイト | https://www.nipponmanpower.co.jp/cc/ |
キャリアアドバイザーとしてのスキルをさらに高めたい方には、日本マンパワーのキャリアコンサルタント養成講座がおすすめです。
同講座は、キャリアコンサルタントが国家資格として制度化される以前の1999年からスタートした実績あるプログラムで、これまでに4万5,000人以上の受講生を輩出してきた信頼と実績のあるスクールです。
国家資格の取得に加えて、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)資格とのダブルライセンス取得が可能で、CDA会員になることで、約2万人規模のネットワークによる「交流」「継続学習」「実践」の機会を得られる点も大きな魅力です。
また、現場経験のある有資格講師陣による実践的な指導により、理論だけでなく現場ですぐ活かせるスキルを身につけることができます。
「キャリアコンサルティングスキルを本質的に磨きたい」「現場力を強化したい」と考えている方に、特におすすめの講座です。

日本マンパワーでは、「経験代謝※」という考え方に基づくカウンセリングを学ぶことができる点が特徴です。
※相談者の「自らの経験」に対する内省を成長につなげる考え方

また、資格取得後はCDA会員になることで、継続的な学びや交流の場が得られることに加え、JCDAの更新講習を割引(一部無料講座有り)で受講できる点も魅力的です。
- スキルアップに拘りたい人
- 経験代謝のキャリアカウンセリングを身につけたい人
- 資格取得後も交流や自己研鑽の場が欲しい人
【無料】講座説明会の予約はこちら
キャリアアドバイザーにおすすめの資格まとめ
キャリアアドバイザーは無資格・未経験から始められる職種ですが、本質的な転職・キャリア支援スキルや成果を高めるには、資格を取得して専門性を高めることが重要です。
特に、国家資格である「キャリアコンサルタント」は、傾聴スキルやキャリア理論、労働法の基礎知識などを体系的に学べるため、求職者との信頼関係構築や的確な提案に直結します。
また、産業カウンセラーやメンタルヘルス・マネジメント検定といった資格を併せて取得することで、心理面や健康面のサポートにも対応でき、キャリア支援の幅が広がります。
キャリアアドバイザーとしての市場価値を高めたい方は、自身の課題や目標に応じた資格を選び、専門性を高めていきましょう。