人材業界は未経験でも転職しやすく、個人や企業の転機に携わる、非常にやりがいのある仕事です。
しかし、適性が無い人が就職すると、成果を出すことができず、転職希望者や採用企業の力になれずに苦しむことになります。
そこで本記事では、人材業界に向いてる人・向いてない人の特徴や、「やめとけ」と言われる理由について解説していきます。職種別の向き・不向きについても解説していくので、ぜひご確認ください。
人材業界とは?
人材業界とは、企業と人(求職者)を結び付けることで、労働市場の流動性を高める役割を担っている業界です。
具体的には、転職エージェントや人材派遣会社のように、直接人材と企業をつなぐ役割を担う企業や、求人広告等が人材業界に該当します。
人材業界の主な業態
- 転職エージェント
- 人材派遣会社
- 求人広告
- 人材コンサルティング
人材業界が提供するサービスは、企業の採用母数の確保や人材ミスマッチの解消、転職を通した求職者のキャリア形成支援を図ることが社会的な意義として求められています。
他にも、上記の枠には当てはまらないものの、近年ニーズが高まっているフリーランスエージェントやSES(System Engineering Service)なども人材業界といえるでしょう。
転職エージェントや人材派遣会社は、労働市場におけるインフラの役割を担っているといえるでしょう。
人材業界の市場規模
人材業界の市場規模は右肩上がりの成長を続けています。矢野経済研究所の調査によれば、人材関連ビジネスの主要な3業界(人材派遣・ホワイトカラー職種の人材紹介・再就職支援)の売り上げは2023年に9兆7,156億円に上ります(下図表を参照)。
年度 | 市場規模 |
---|---|
2023年度 | 97,156億円 |
2022年度 | 91,401億円 |
2021年度 | 85,644億円 |
2020年度 | 79,302億円 |
参照:矢野経済研究所「人材ビジネス市場に関する調査を実施(2024年)」
人材業界の市場拡大の要因としては、国内の労働力人口減少による「採用難易度の高まり」が挙げられます。人材不足の環境の中で採用を行うために、企業は人材紹介や人材派遣、採用アウトソーシング等の多様な手法を活用しており、人材業界への需要を増大させています。
今後も労働力人口の減少が続くことが予想されるため、人材業界のさらなる市場規模拡大が見込まれており、2024年には10兆円を超える想定となっています。
また、上記に記載した以外にも、ITエンジニアや介護職等の専門スキルを持つ高度人材の需要が引き続き増加すると予測されており、人材業界全体の市場規模拡大は継続するといえるでしょう。
転職エージェントの市場動向
年度 | 就職件数(人) | 手数料(千円) |
---|---|---|
2019年度 | 693,300 | 536,125,070 |
2020年度 | 698,414 | 583,234,494 |
2021年度 | 606,084 | 522,174,594 |
2022年度 | 706,846 | 629,817,008 |
2023年度 | 774,451 | 768,163,154 |
参照:厚生労働省「職業紹介事業の事業報告の集計結果について」
転職エージェント(有料職業紹介事業)の手数料売上の推移は、上表の通り右肩上がり(※)を続けており、2023年には約7,681億円に上ります。
※2021年に低下が見られるのは新型感染症流行が要因
職種ごとにみれば低下傾向にある業界もあるものの、ITエンジニアや介護職の深刻な人材不足に伴って、職業紹介の領域全体としては今後も市場規模の拡大が見込まれています。
年度 | 有料職業紹介事業所数 |
---|---|
2019年度 | 25,684 |
2020年度 | 26,793 |
2021年度 | 27,899 |
2022年度 | 28,740 |
2023年度 | 30,113 |
市場規模拡大に伴って、民営の職業紹介事業所数も拡大を続けており、有料職業紹介事業所の数は30,113件(2023年度)に上っています(上表参照)。
転職エージェント(有料職業紹介事業)のビジネスモデルは参入障壁が低く、様々な企業が新規事業として始めやすいことに加え、起業もしやすいという特徴があります。
そのため、事業所数も右肩上がりが続いています。
人材派遣の市場動向
派遣労働者数の確認時点 | 派遣労働者の人数 |
---|---|
2019年6月 | 1,565,799 |
2020年6月 | 1,562,090 |
2021年6月 | 1,686,697 |
2022年6月 | 1,861,574 |
2023年6月 | 1,924,455 |
最後に、派遣労働者数の推移を見ていきましょう。厚生労働省の集計調査によれば、人材派遣市場も緩やかな右肩上がりを続けており、2023年6月には約192万人の派遣労働者がいることが分かります。
人材派遣は有料職業紹介に比べると制約が多い事業形態といえますが、国内の労働力不足を背景に、今後も市場拡大は続く見込みといえるでしょう。
人材業界に向いてる人の特徴
人材業界では、売り上げ目標達成のための計画力と実行力が求められることに加え、個人の人生の転機や企業の経営戦略に深く関わる仕事です。そのため、決して誰でもできる仕事ではありません。
以下の特徴を持っている人は、特に人材業界の仕事に向いているといえるでしょう。
人材業界に向いてる人の特徴
- コミュニケーション能力が高い
- 洞察力が優れている
- 新しい知識を積極的に吸収する姿勢がある
- 目標達成に向けて行動できる
- 転職やキャリアに悩んだ経験がある人
上記を全部持っていないといけないわけではないですが、一つでも秀でたものがあれば、それを武器に人材業界で活躍しやすいといえるでしょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
コミュニケーション能力が高い
人材業界では、コミュニケーション能力の高い人が活躍しやすい環境といえます。
人材業界の仕事では、採用企業と求職者の双方のニーズを的確に把握し、最適なマッチングを実現することが重要です。そのため、相手の真意を汲み取る傾聴や、必要に応じて助言や指導を行うことが求められます。
特に、企業の採用担当者との折衝や求職者への面談(キャリアコンサルティング)では、信頼関係(ラポール)の形成をしたうえで、説得力のある情報提供をしていくことが求められます。
「個人のキャリア」「企業の採用戦略」という非常に重要度が高く、かつ確実性の低い商材を扱う上では、信頼関係の構築力が必須になるといえるでしょう。
洞察力が優れている
人材業界で活躍する為には、高い洞察力が求められます。
なぜなら、企業の採用ニーズや求職者のキャリア志向を深く理解するためには、優れた洞察力が欠かせないためです。これは、表面的な情報のヒアリングだけではなく、その背景にある本質や本音を見抜く力を指します。
例えば、転職希望者が話す希望条件や退職理由には、本人も自覚していないキャリアに関する考え方があるため、面談を通して本音や本質的な課題を見抜く必要があります。
また、企業の採用支援においては、求人企業が抱える経営課題に対して、業界のトレンドや経済動向を的確に把握したうえで、提案内容に反映させる力も求められます。
そのためには、課題や本質を見抜くための洞察力が非常に役立つでしょう。
課題を決めつけるのではなく、仮説を立てたうえで顧客(求職者・採用企業)とすり合わせをしながら解決を目指す必要があります。
新しい知識を積極的に吸収する姿勢がある
人材業界で働く場合は、新しい知識を積極的取り入れていく学習意欲が求められます。
人材業界で求められる知識は、労働市場の変化や労働関係法令の改正などに伴って変化していきます。そのため、常に最新のトレンドを追いかけて情報収集を行うことが求められます。
また、転職エージェントや人材派遣会社で働く場合は、求人企業の研究に加え、当該企業が属する業界に関する基礎知識を習得することが求められます。
また、特定の専門職に特化した転職エージェントやフリーランスエージェントで勤務する場合は、専門とする領域においてより高いレベルの知識が求められるでしょう。
顧客の業界の専門的知識を理解した上で、労働市場やキャリア形成に関する体系的なスキルを身に付けることで、専門家としてより高いレベルの支援が出来るようになるといえるでしょう。
目標達成に向けて行動できる
目標の数字を達成するために、具体的に行動を積み上げられる人は、人材業界に向いているといえるでしょう。
人材業界企業の多くは成果主義の色が強く、設定された個人目標と、「KPI(Key Performance Indicator)」と呼ばれる目標達成に向けた行動指標を追いかけることになります。
例えば、転職エージェントで働くキャリアアドバイザーの場合、月間の紹介手数料の目標を設定した場合、達成に必要な成約数や求人の紹介数、求職者との面談数等のプロセスの数字を積み上げていく必要があります。
そのため、目標達成に向けて素早く行動できる人は、人材業界への適性が高いといえるでしょう。
目標に対して見込みが足りない場合は、課題を解決するための施策の検討と実施まで求められることが多く、主体的にPDCAを回していく姿勢が求められるでしょう。
転職やキャリアに悩んだ経験がある人
自分自身がキャリアや転職に悩んだ経験がある人は、人材業界の中でも、「キャリアアドバイザー(※)」と呼ばれる職種に特に向いています。
※キャリアアドバイザー:転職エージェントや派遣会社において求職者と面談を行う職種
求職者の立場に寄り添った視点を持ちやすく、信頼関係を構築しやすい場合もあるため、人材業界で働くうえで大きなアドバンテージを得られます。
もしも特定の専門職においてキャリアに悩んだ経験がある場合は、その業界に特化した転職エージェントで働くうえで、より強みを生かした転職支援が出来るでしょう。
キャリアに悩んだ実体験は何よりの強みになるだけではなく、仕事へのモチベーションにつなげやすい点もメリットといえます。
ただし、自分の経験をそのまま転職希望者に置き換えるのは決して正しくはありません。求職者一人ひとり、状況が違う前提で転職支援などを行うように注意しましょう。
人材業界に向いてない人の特徴
人材業界は以下のような人の場合は、あまり向いていないといえるでしょう。
人材業界に向いてない人の特徴
- 行動目標を追いかけたくない人
- イレギュラーな対応が苦手な人
- 転職希望者を選り好みする人
- 責任感が無い人
もちろん、どれか一つでも当てはまっていれば「人材業界はやめた方がいい」というわけではありません。ただし、人材業界で働くうえで求められることと、自身の特性のミスマッチが大きくなると早期退職につなげる場合があるのでしっかり確認しておきましょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
行動目標を追いかけたくない人
前述の通り、人材業界は成果主義・目標主義が強く、その達成のために行動目標を追求することが求められます。
クライアントである求人企業の採用や、求職者の転職成功を支援するために、細かく設定されたKPI(行動計画)を達成することが日常業務の中心になるでしょう。
そのため、「数字に縛られずに働きたい」「成果ではなく頑張りで評価してほしい」という人の場合は、人材業界は働きやすい環境とはいえないでしょう。
イレギュラーな対応が苦手な人
人材業界の中でも、転職エージェントや人材派遣会社はイレギュラーな事態が発生しやすいため、予定外のことでも柔軟に対応する能力が求められます。
具体的には、企業における突然の採用中止や内定取り消し、求職者の内定辞退や早期退職に伴うクレーム対応などが必要になります。
このような予測が難しい状況に対してストレスを抱えやすい人は、人材業界の仕事に向いていない可能性があるでしょう。
予想外の状況に対しても、迅速かつ適切な対応が求められるのが人材業界の特徴です。ストレスを感じるのは避けられませんが、トラブルを重ねないようにするためには、冷静に対処していくことが重要です。
転職希望者を選り好みする人
転職エージェントや派遣会社で働いていると、非常に多種多様な求職者の方の支援をする機会があります。そのため、求職者ごとの経歴や性格、転職先の希望に対して、自分の価値観で選り好みするタイプの人は、人材業界には不向きといえます。
求職者に対して偏見や先入観があると、ラポール(信頼関係)構築の障害になることに加え、表面的な能力だけで求人紹介をしてしまうとミスマッチにもつながります。
これは企業に対しても同様で、自分の好みで採用支援を注力する企業を選ぶのではなく、自社やチームの方針、転職市場のニーズに応じて対応内容や戦略を検討する必要があります。
自分の好みで品質が変わるような仕事をすれば、求職者だけではなく、採用企業からの信頼も失ってしまうため、注意しておきましょう。
人材業界で働く人には、求職者のポテンシャルを見抜く洞察力や、キャリアの悩みに寄り添う共感力が必要です。
多少の好き嫌いがあるのは仕方ないですが、好みで転職支援の対応内容を変えることがあってはなりません。
責任感が無い人
人材業界は、人の人生や企業の未来を左右する責任の重い仕事です。クライアント企業に対しては採用成功の責任を負い、求職者に対しては「転職」という人生の転機にキャリア形成の一助を担う役割があります。そのため、「責任感が無い」人には、この業界に向いていません。
例えば、自身の対応のミスが原因で、転職や採用活動の失敗につながることもあるため、常に高いプロ意識をもって取り組むことが求められます。
重責を担う仕事であるという自覚と行動が出来ない場合は、人材業界の仕事は向いていないといえるでしょう。
人材業界の具体的な仕事内容
ここからは、人材業界の具体的な仕事内容について解説していきます。
人材業界の代表的なビジネスモデルとして、「転職エージェント」や「人材派遣会社」が挙げられます。
求職者対応を行う「キャリアアドバイザー」と、採用企業(クライアント)対応を行う「リクルーティングアドバイザー」の分業体制がとられていることが多いですが、どちらも一人の担当者が兼任する「両面型コンサルタント」という働き方もあります。
人材業界の主な職種
- キャリアアドバイザー
- リクルーティングアドバイザー
- 両面型コンサルタント
それぞれの職種について、詳しい仕事内容や向いてる人・向いてない人の特徴を解説していきます。
キャリアアドバイザーの仕事内容
キャリアアドバイザー(通称:CA)とは、転職エージェントや人材派遣会社において求職者(転職希望者)の仕事探しやキャリアサポートを行う職種です。
具体的には、転職における希望条件のヒアリングや求人の紹介、応募書類(履歴書・職務経歴書)の添削や面接対策等を通した転職サポートを行います。
単なる求人の紹介役ではなく、不確実性の高い現代社会におけるキャリアプランの設計支援と、それに即した求人紹介が求められます。
そのため、転職市場の動向に精通しつつ、求職者の本音を引き出すカウンセリングスキルが求められます。
キャリアアドバイザーとしてのスキルを高めたい人には、キャリアコンサルタント資格の取得がオススメです。
体系的なキャリア理論や、カウンセリングに関する基礎スキルを学ぶことができるため、人材業界で活躍を目指す人は必見の国家資格です。
キャリアアドバイザーに向いてる人の特徴
キャリアアドバイザーは高度なコミュニケーション能力と、転職市場における専門的知識が求められる職種です。キャリアアドバイザーに向いている人の特徴は以下の通りです。
キャリアアドバイザーに向いてる人の特徴
- 傾聴スキルが高い人
- 共感力が高い人
- 業界動向に敏感な人
- 問題解決志向が高い人
キャリアアドバイザーは、転職を通して求職者の自己実現を支援する伴走者としての役割を担っています。
そのため、求職者の話をしっかりと聞いたうえで、本質的な課題を一緒に考え、その解決のための転職支援を行うことが求められます。
自分では自覚が無くても、よく悩みを相談される人は傾聴スキルが高い場合があります。
キャリアアドバイザーに向いてない人の特徴
キャリアアドバイザーとしての資質が低い人の特徴としては、以下が挙げられます。
キャリアアドバイザーに向いてない人の特徴
- 傾聴スキルが低い
- 相手の感情に流されやすい
- 仕事のための勉強が苦手
キャリアアドバイザーには高い傾聴・共感スキルが求められる一方で、求職者の感情に流され過ぎてしまうと、転職支援に支障が出てしまう場合があります。例えば、採用選考に落ちてしまった求職者の話を聞くことで、自身の気持ちも落ち込んでしまうという場合は、気持ちの切り替え方法に工夫をする必要があるでしょう。
また、転職市場やキャリアにおける情報収集やインプットを苦痛に感じる場合は、キャリアアドバイザーの仕事は向いていないといえるでしょう。
キャリアアドバイザーには転職のプロとしての支援スキルが求められるものの、転職エージェント入社後の学びはOJTが中心になる場合がほとんどです。
そのため、キャリアアドバイザーとして一人前になるためには、能動的に転職やキャリアに関する勉強をすることが必要になります。
リクルーティングアドバイザーの仕事内容
リクルーティングアドバイザー(通称:RA)とは、転職エージェントや人材派遣会社において、企業の採用をサポートする法人営業職です。
経営層や採用担当者との面談・商談を通して採用ニーズや人材要件を明確化し、社内のキャリアアドバイザーと連携することで応募者を増やし、企業の採用支援を行います。
候補者が選考を進む場合、オファー条件の交渉(年収等)や入社日の調整などもリクルーティングアドバイザーの仕事となります。
リクルーティングアドバイザーに向いてる人の特徴
リクルーティングアドバイザーに向いている人の特徴としては、以下が挙げられます。
リクルーティングアドバイザーに向いてる人の特徴
- 論理的思考ができる人
- コミュニケーションスキルが高い人
- 調整力が高い人
- 目標達成志向が強い人
- ストレスに強い人
リクルーティングアドバイザーには、企業の採用活動を支援するうえで重要な役割を担うため、高いコミュニケーションスキルと調整力が求められます。
また、「人材の流動化を支える」という転職市場におけるインフラとしての役割を全うするためにも、数字目標への達成志向が高い人の方が向いているといえるでしょう。
リクルーティングアドバイザーはキャリアアドバイザーに比べると営業職としての特性が強く、数字を追いかけることが苦にならない人が向いているといえます。
また、企業の上席者と打ち合わせをすることが多い職種のため、論理的思考スキルとストレス耐性があると活躍しやすいといえるでしょう。
リクルーティングアドバイザーに向いてない人の特徴
以下の特徴に当てはまる人は、リクルーティングアドバイザーの仕事が向いていない可能性があります。
リクルーティングアドバイザーに向いてない人の特徴
- コミュニケーションが一方的になりがちな人
- 目標達成意識が低い人
- ストレス耐性が低い人
リクルーティングアドバイザーは、企業の採用を支援する立場でありながらも、必要に応じて求職者の要望を交渉することが求められる仕事です。
そのため、求人者と求職者の間に立って双方の要望を調整するスキルが求められるため、一方的なコミュニケーションをとりがちな人には向いていない仕事といえるでしょう。
両面型コンサルタントの仕事内容
転職エージェントの中には、キャリアアドバイザーとリクルーティングアドバイザーの役割を一人で行う「両面型コンサルタント(一気通貫型)」という体制を採用している場合もあります。
両面型コンサルタントの場合、企業の採用要件のヒアリングや求人票の作成、求職者との面談や面接の日程調整、条件交渉や採用後のフォローまで、一人で多岐にわたる業務を行います。
企業から求職者まで自分の目で見極められるので、ミスマッチの少ない転職支援が出来る点が魅力といえるでしょう。
そのため、分業が難しい事業規模の小さい人材会社だけではなく、転職支援の質を重視する転職エージェントでも採用されやすい形式となっています。
私の転職エージェント時代も「両面型コンサルタント」として採用支援・転職支援を行っていました。
一人の求職者に対して最後まで自分一人で支援を行うことができるため、非常にやりがいのある働き方だったと感じています。
両面型コンサルタントに向いてる人の特徴
両面型コンサルタントには、前述したキャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザーどちらの仕事の資質も求められます。また、2つの役割を一人で行うからこそ、以下のような人に向いているといえるでしょう。
両面型コンサルタントに向いてる人の特徴
- 転職支援と採用支援を一貫して行いたい人
- タスクマネジメントが得意な人
人材業界の両面型コンサルタントは、転職支援と採用支援を一貫して行いたい人に向いている働き方です。自身が獲得した求人や採用ニーズに対して、候補者の面談から採用決定まで携わることができるので、一貫して採用支援をしたい人におすすめの職種です。
ただし、分業体制が敷かれてなく、仕事の種類が多いため、高いタスクマネジメントスキルが必要になるため、注意しておきましょう。
両面型コンサルタントに向いてない人の特徴
以下のような人は両面型コンサルタントに向いてない人といえるでしょう。
両面型コンサルタントに向いてない人の特徴
- 企業か求職者に偏った見方をしてしまう人
- タスクマネジメントが苦手な人
両面型コンサルタントは求職者の転職支援と企業の採用支援に同時に携わるからこそ、どちらにも偏らないフラットな立ち位置が求められるため、それが出来ない人には向いていない可能性があります。
また、自身の仕事の進捗の遅れが企業の採用と求職者の転職の遅れに直結するため、仕事をためがちな人や、タスクマネジメントが苦手な場合は分業型の転職エージェントの方が向いているといえるでしょう。
人材業界はやめとけと言われる理由
転職エージェントや人材派遣会社で働くことを検討している人の中には、「人材業界はやめとけ」という声を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。人材業界はやめとけと言われる主な理由は以下の通りです。
人材業界はやめとけと言われる理由
- 残業時間が長い
- 理想と現実にギャップが生まれやすい
- キャリア支援の内容が体系化されていない
- 離職率が高い
人材業界はその特性上、人によっては働き続けることが大きな負担になる可能性があります。特に
上記の「やめとけ」と言われる理由について詳しく解説していくので、人材業界に転職することを検討している人の中でも、特に新卒者や未経験者はチェックしておきましょう。
残業時間が長い
人材業界の仕事で割くべきリソースが「個人の労働時間」に集約されやすく、また、行動をすればするほど成約数を伸ばしやすい傾向があります。
加えて、企業に対しては定時内に商談を行い、求職者に対しては在職中の仕事が終わった後に面談(定時後)を行うため、両面型コンサルタントは特に残業時間が長くなる場合があります。
扱っている職種・業界の転職繁忙期には特に残業時間が長くなるため、ワークライフバランスを重視する人にとっては、決して働きやすい環境とは言い切れません。
企業によっては残業が少ない会社もあるので、ワークライフバランスを重視する人は事前に確認するようにしておきましょう。
理想と現実にギャップが生まれやすい
人材業界は理想と現実にギャップが生まれやすく、「やめとけ」と言われてしまう一因になっています。
人材業界に就職する人の多くは、「人の役に立ちたい」「転職を通したキャリア支援をしたい」という理想を持って入社する一方で、実際の仕事は売上目標達成が重視され、業界によっては企業優位の交渉を求められる場合があります。
そのため、転職活動において困っている求職者であっても、採用の見込みながい場合は見捨てることも必要になってしまいます。
純粋に「求職者の転職支援」を志して入社する人の場合、このような理想と現実のギャップを感じ、離職につながってしまうケースも少なくありません。
「求職者のために働きたい」という理想を叶えるためには、非常に高いレベルの自己研鑽が必要になります。具体的には、転職市場における情報に精通することに加え、キャリアに関する知識やカウンセリングのスキル、コーチングスキル等を身に付ける必要があります。
求職者・採用企業・自社(人材会社)の三方良しを実現するためには、高いスキルが要求されますが、ロールモデルが社内にいない場合も多く、その際は自分の力であるべき姿を模索する必要があります。
また、体系的なスキルを身に付けたい場合は、キャリアコンサルタントやコーチングなどの資格取得を目指すとよいでしょう。
キャリア支援の内容が体系化されていない
多くの転職エージェントや人材派遣会社において、キャリアカウンセリングや採用支援のプロセスが個人のスキルや経験に依存しており、体系的に学ぶ方法が確立していないことが多々あります。
スキルの習得はOJT中心で、現場の実践を通して仕事を覚えるスタイルの人材会社が多いため、責任の重さに反して、知識やスキルが薄い状態で企業や求職者の支援に入るというケースもよく見られます。
このように、教育環境が整っていないことによるスキル習得の難易度の高さから、「人材業界はやめとけ」という声につながっているようです。
人材紹介や人材派遣を行うための手順そのものはマニュアル化・標準化がされていることが多いものの、キャリア支援の質を左右する「キャリアカウンセリング(求職者との面談)」は担当者ごとにブラックボックス化され、個々人のスキルや経験に依存しているケースが多いようです。
そのような環境で正しいスキルを習得していくためには、ハイパフォーマーのキャリアアドバイザーの面談に同席させてもらったり、資格取得を通して体系的な知識を身に付けることが有効です。
離職率が高い
ここまで解説してきたように、人材業界は残業時間が長くなりやすく、理想と現実にギャップが生まれやすい業界といえます。
目標売上達成のためのKPI管理を厳格に行う企業が多く、未達成の場合には上司からのフィードバックが厳しくなるだけでなく、自己効力感を失ってしまうこともあります。
そのため、離職率が高い会社が多く、それが「人材業界はやめとけ」という意見につながっていると思われます。
人材業界のスキルアップに役立つおすすめ資格
人材業界で求められるスキルを習得するためには、仕事を通して試行錯誤を行うだけではなく、資格取得を通して体系的なスキルや知識を得る方法があります。
人材業界のスキルアップに役立つ資格は以下の通りです。
資格 | おすすめ度 | 難易度 |
キャリアコンサルタントおすすめ! | (5.0 / 5.0) | 普通 |
キャリアコンサルティング技能士 | (3.5 / 5.0) | 難しい |
衛生管理者 | (4.5 / 5.0) | 簡単 |
社会保険労務士 | (3.5 / 5.0) | 難しい |
コーチング | (4.0 / 5.0) | 普通 |
それぞれ詳しく解説していきます。
キャリアコンサルタント
人材業界で働く人に最もおすすめの資格として、「キャリアコンサルタント」が挙げられます。
キャリコンサルタントは職業能力開発促進法に規定された国家資格であり、キャリアコンサルティングを行う専門家のことを指します。
国家資格ではあるものの、試験の難易度は決して高くはなく、例年の合格率は45~60%程度を推移しています。
実務経験が無い場合、資格を取得するためには厚生労働大臣が指定する講習(通称:キャリアコンサルタント養成講座)を受講する必要があるため、講座の中で体系的なカウンセリングスキルやキャリア理論、労働関係法令に関する知識を学ぶことができます。
転職エージェントのキャリアアドバイザー業務はもちろん、リクルーティングアドバイザーとしても現場で役立つスキルを習得できるため、人材業界で働く人に最もおすすめの資格です。
>おすすめのキャリアコンサルタント養成講座比較はコチラで解説
キャリアコンサルティング技能士
キャリアコンサルティング技能士はキャリアコンサルタントの上位資格に位置付けられる資格です。1級・2級の2種類があり、求められるレベルはそれぞれ指導者レベル・熟練レベルとされています。
資格 | 求められるレベル | 難易度 |
---|---|---|
キャリアコンサルティング技能士1級 | 指導者レベル | とても難しい |
キャリアコンサルティング技能士2級 | 熟練レベル | 難しい |
キャリアコンサルタント | 標準レベル | 普通 |
資格の取得難易度は高いものの、キャリアアドバイザーやリクルーティングアドバイザーとして、部下やチームの育成をする際には自身のレベルアップのために取得を検討するといいでしょう。
私自身、キャリアコンサルタントやキャリアコンサルティング技能士の資格取得を通して学んだ内容を、転職エージェント時代にキャリアカウンセリング時のマニュアル作成や後進育成などに活かしていました。
キャリア支援者としてのスキルアップや、指導者としての視点などが必要な際には、挑戦してみるといいでしょう。
>キャリアコンサルティング技能士2級の難易度・合格率解説はコチラ
衛生管理者
衛生管理者は、常時50人以上の労働者がいる事業所に設置が義務付けられる国家資格者です。
資格試験の勉強を通して、労働関係法令に関する基礎知識を身に付けられることに加え、全国各地の安全衛生技術センターで毎月試験が開催されているため、取得しやすい国家資格といえます。
有害業務を含まない業種に対応する「第二種」と、全ての業種に対応可能な「第一種」の2種類があるため、工場・製造業界に強い人材会社で働く場合は第一種衛生管理者、それ以外の場合は第二種衛生管理者の取得を目指すといいでしょう。
社会保険労務士
社会保険労務士は、労務および社会保険の知識に精通し、「人」に関する専門家である国家資格です。
企業が人材を採用するうえで、労働や社会保険に関する様々な課題に対応するための知識を身に付けられるので、人材業界の中でも、多数の派遣社員を自社で雇用する「人材派遣会社」で働く人に特にオススメの資格です。
社会保険労務士は独占業務を持っており、非常に権威性が高い国家資格です。そのため、人材会社の経験を活かして、将来的に人事部門(労務)で働きたい人や、独立を検討している人にもオススメの資格といえます。
ただし、資格の取得難易度は高く、試験は年に1回しか実施されたないことに加え、合格率は例年10%以下を推移しています。そのため、社労士を目指す際には、中期的なキャリア設計を行ったうえで国家試験への挑戦を検討するといいでしょう。
コーチング
近年、人材業界で注目されている資格のひとつに「コーチング」が挙げられます。
コーチングとは、クライアントとの対話を通して目標達成と行動を支援するスキルです。直接的なアドバイスや指導ではなく、問いかけを通して「気づき」を促す点が特徴で、求職者とのキャリア面談だけではなく、チームのマネジメントや1on1においても有用性の高いスキルといえるでしょう。
コーチングは様々なスクールで学ぶことが可能ですが、国家資格は存在しません。そのため、どこのコーチングスクールで学んでも、団体が認定する民間資格しか取得することは出来ないため、注意しておきましょう。
コーチングの資格は権威性が決して高くありませんが、スキルそのものは人材業界と非常に親和性が高いといえるでしょう。
特に、求職者と面談を行うキャリアアドバイザーや、部下のマネジメントを行うマネージャーやリーダー職の方におすすめのスキルといえます。
>おすすめコーチングスクールの比較はこちら!(キャリアコーチングに強い講座も掲載)
人材業界経験者の将来性
これから人材業界で働くことを検討している人の中には、「人材業界に将来性はあるのか?」「経験を活かした転職は出来るのか?」等の中期的視点のキャリア設計が気になっている人も多いようです。
そこで、ここからは人材業界経験者の将来性について解説していきます。
人材業界における転職には困らない
キャリアアドバイザーやリクルーティングアドバイザーとして経験がある人の場合、人材業界においては転職しやすいといえるでしょう。
前述したように、人材業界の市場規模は右肩上がりを続けており、転職エージェントや人材派遣会社、近年はSESの営業職でも人材が不足しており、経験者であれば採用されやすいといえます。
ただし、人材会社は離職率が高く、マネジメント層に若手人材が多いため、30~40代で管理職経験が無い場合は、やや働きづらさを感じる可能性があるため、注意しておきましょう。
人材会社でハイパフォーマーとして活躍していた人や、マネジメント経験がある場合、転職先の条件交渉も有利に運ぶことができるでしょう。
人材業界の経験を活かして他職種へ転職も可能
人材業界の経験を活かして、他業界へ転職する場合の選択肢は以下のようなものがあります。
- 人事・採用
- 人材業界でクライアントの採用支援に携わってきた経験を活かし、事業会社の人事部門で採用の仕事を行うという道があります。人材会社で採用の母集団形成に関わる仕事の経験がある場合、活躍しやすいといえるでしょう。
ただし、採用の仕事は門戸が狭く倍率が高い仕事といえるため、転職の際にはやや苦戦する可能性があります。 - 営業職
- 人材業界で企業や求職者への営業の仕事をしてきた経験を活かして、他の業界で営業職として働く道もあります。特に、IT業界のような無形商材を扱う場合、これまで培った課題解決力や提案力を生かしやすいといえるでしょう。
- 教育業界
- 意外と知られていない人材業界出身者の転職先として、教育業界が挙げられます。学校法人や、民間の社会人スクール(資格取得の講座など)におけるスクールカウンセラーや営業職の場合、広い意味で「キャリア」というテーマの商材を扱うことになるため、活躍しやすい業界といえるでしょう。
人材業界の出身者は、仕事を通してコミュニケーションスキルや交渉・提案力が培われており、他業界や職種に転職した場合であってもそれらのスキルを活かして活躍することが可能です。
ただし、転職活動においては「どれだけ成果を上げてきたか?」という実績や、数字達成のための創意工夫が面接で見られやすいため、より良いキャリア形成のためには、まずは成果を出すことが非常に重要になるでしょう。
人材業界に向いてる人の特徴まとめ
人材業界に仕事は、以下のような特徴は以下の通りです。
- コミュニケーション能力が高い
- 洞察力が優れている
- 新しい知識を積極的に吸収する姿勢がある
- 目標達成に向けて行動できる
- 転職やキャリアに悩んだ経験がある人
人材業界の仕事は、企業の採用活動や個人のキャリア形成を支援する重要な役割を担っています。そのため、高いスキルと継続的な自己研鑽が求められます。
しかし、未経験からでも働きながらスキルを身につけることは十分可能です。「人の転機を支える仕事がしたい」と考えている方は、まずどのような企業があるのか調べてみることをおすすめします。
転職を検討する際には、求職者を支援する「キャリアアドバイザー」か、企業の採用支援や交渉を行う「リクルーティングアドバイザー」のどちらが向いているか考えつつ、自分の進むべき方向性を決めていきましょう。