介護福祉士は現場の介護職にとって唯一の国家資格で、介護のスペシャリストであることを証明する資格です。
介護職としてキャリアアップを目指すのであれば、ぜひ取得しておきたいところでしょう。
本記事では、「介護福祉士国家試験の効果的な勉強法は?」「独学でも合格できる?」といった疑問や悩みを持っている方に対して役立つ内容をお届けします。
そのため、介護福祉士国家試験に向けて時間を効率的に活用し、試験本番に向けて計画的な学習スケジュールで進めていきたい方は是非ご確認ください。
介護福祉士国家試験の基本情報
介護福祉士国家試験に関する、以下4つの基本情報を解説します。
それぞれの詳しい内容を見ていきましょう。
介護福祉士の受験要件
介護福祉士の受験要件は大きく以下の4つの種類があります。
上記の中でも「実務経験ルート」の受験生は最も多く、第36回介護福祉士試験では全体の86.85%を占めています。
受験資格 | 受験者数 | 割合 |
---|---|---|
実務経験ルート | 64,788人 | 86.85% |
実務経験以外のルート | 9,807人 | 13.15% |
全体 | 74,595人 | 100% |
実務経験ルートにおける受験資格は以下の2種類です。
ほとんどの方は、介護現場で実務経験を積みながら「実務者研修を修了するルート」で受験しています。
(介護福祉士)
とくに難しく考える必要はなく、実務経験を3年積んで実務者研修を修了しておけば、介護福祉士国家試験を受けられるという認識で問題ありません。
2025年(第37回)介護福祉士国家試験のスケジュール
2025年に実施される第37回介護福祉士国家試験のスケジュールと概要は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
試験日 | 2025年1月26日(日) |
試験時間 | ・午前:10時〜11時40分 ・午後:13時35分〜15時35分 |
受験地 | 全国35都道府県 (詳細は社会福祉振興・試験センターHPで確認) ※受験会場がない都道府県:山形県・栃木県・茨城県・富山県・福井県・滋賀県・三重県・奈良県・山梨県・山口県・徳島県・佐賀県 |
受験申し込み受付期間 | 2024年8月7日(水)〜9月6日(金) |
受験手数料 | 18,380円 |
合格発表 | 2025年3月24日(月) |
介護福祉士国家試験は、受験申し込み受付期間が1ヶ月と短いので、申し込み忘れがないよう注意しましょう。
2025年(第37回)介護福祉士国家試験の出題科目
介護福祉士国家試験の出題科目は、午前と午後で以下のように分かれています。
試験時間 | 試験科目 |
午前 | ・人間の尊厳と自立 ・人間関係とコミュニケーション ・社会の理解 ・こころとからだのしくみ ・発達と老化の理解 ・認知症の理解 ・障害の理解 ・医療的ケア |
午後 | ・介護の基本 ・コミュニケーション技術 ・生活支援技術 ・介護過程 ・総合問題 |
参考:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「試験概要」
介護福祉士国家試験は、すべての科目で点数を取らないといけないため、勉強の段階で苦手科目を把握し、まんべんなく点数が取れるように準備しておくことが大切です。
過去10年分の合格率と難易度
介護福祉士試験の難易度を事前に把握するため、合格率の推移をみていきましょう。過去10年分の介護福祉士件の合格率と合格基準は以下表の通りです。
試験年度 | 合格基準点 | 合格率 |
---|---|---|
2015年(第27回) | 68点 | 61.0% |
2016年(第28回) | 71点 | 57.9% |
2017年(第29回) | 75点 | 72.1% |
2018年(第30回) | 77点 | 70.8% |
2019年(第31回) | 72点 | 73.7% |
2020年(第32回) | 77点 | 69.9% |
2021年(第33回) | 75点 | 71.0% |
2022年(第34回) | 78点 | 72.3% |
2023年(第35回) | 75点 | 84.3% |
2024年(第36回) | 67点 | 82.8% |
※125点満点
介護福祉士国家試験に合格するためには、以下2つの条件を満たさなければいけません。
介護福祉士の合格基準
- 全体の60%程度を基準として問題の難易度で補正した点数以上の得点をとる
- すべての科目において得点をとる
過去の合格点を見ると、80点とっておけば合格基準点を上回る確率は高いといえるでしょう。
介護福祉士国家試験の勉強方法3つの選択肢
介護福祉士国家試験の勉強方法は、主に以下の3つです。
介護福祉士の勉強方法の選択肢
- 独学で勉強する
- オンラインで学ぶ
- 資格スクールに通学する
それぞれ具体的な内容を紹介します。
独学で勉強する
独学で勉強する場合は、主に以下のような方法があります。
独学の場合は、自分で勉強方法を決められるというメリットがある反面、自分で学習スケジュールを考えたり、勉強方法を工夫したりすることが負担に感じる場合もあるでしょう。
多くの方が独学で学習を進めるため、本記事では独学で介護福祉士の勉強する方のために「介護福祉士試験対策のための具体的な学習ステップ」や「介護福祉士国家試験対策におすすめの独学勉強方法3選」をまとめているので、そちらもぜひ参考にしてください。
オンラインで学ぶ
オンラインをはじめとして、通信教育で学ぶ方法もあります。
以前からあるような資格取得講座を利用してもいいですし、最近では資格スクールが「介護福祉士受験対策講座」といったオンライン講座を開講している場合もあります。
オンラインとはいえ、与えられた課題があるため「勉強しなきゃいけない」という学習モードに入れるのはオンライン学習のいいところでしょう。オンラインであるからこそ、時間や場所のとらわれない点もメリットです。
ただ独学のみで勉強するよりも費用はかかるので、あまりお金をかけたくないという人には向いていません。
資格スクールに通学する
オンラインではなく、実際に資格取得スクールに通う勉強方法もあります。
通学の場合は、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット | ・直接講師に疑問点を聞ける ・同じ志を持った方々と学べる ・模擬試験の添削もしてもらえる |
デメリット | ・わざわざ開講場所に行く手間が生まれる ・独学よりも費用がかかる |
(介護福祉士)
資格スクールに通うのは時間とお金がかかりますが、実際に介護福祉士を目指す他の方と交流できたり、講師と直接やりとりしたりすることで、試験に向けたモチベーション管理にもつながるでしょう。
介護福祉士試験対策のための具体的な学習ステップ
介護福祉士試験対策のための具体的な学習ステップは、以下のとおりです。
介護福祉士試験対策の具体的なステップ
- 参考書を購入して勉強する
- 過去問を解いてみる
- 苦手科目を重点的に学習する
上記は独学で学習を進める際の基本ステップになっているので、ぜひ参考にしてください。
ではそれぞれの手順の詳しい内容を見ていきましょう。
参考書を購入して勉強する
まずは必要な参考書を選びましょう。介護福祉士に関する参考書は、多くの種類があるため、自分の性格に合わせて選ぶといいでしょう。
たとえば、テキストを読むのが得意ではない方は、イラストが多く視覚的に目で見て学べるような参考書がおすすめです。
私のように、基本の参考書を購入してもほとんど使わないような方の場合は、過去問題集のみ購入し、とにかく問題を解き続けるといった学習方法もあります。
(介護福祉士)
参考書は決して安くはないので、できるだけ無駄なものは買わないよう、実際に本屋で内容を確認した上で購入しましょう。
過去問を解いてみる
参考書や問題集を購入したら、さっそく介護福祉士過去問題を解いていきます。
何も勉強しない状態で過去問なんて解けるの?と疑問に思う方もいるでしょう。しかし何も勉強していないからこそ、今の自分の理解度を確かめるために過去問を解くことが有効です。
過去問を解けば、意外と理解している科目がわかったり、苦手な科目に気付けたりする効果が期待できます。
(介護福祉士)
自身の理解度を把握して勉強を効率的に進めるためにも、まずは過去問を解くことが大切です。
苦手科目を重点的に学習する
過去問を解いて苦手科目がなんとなくわかったら、その分野を重点的に勉強する時間も設けましょう。
介護福祉士国家試験は、総得点が合格基準点を満たしていても、すべての科目で得点を取れないと合格できません。そのため、苦手だからといって勉強しないわけにはいかないのです。
苦手科目を勉強する際は、間違えた問題の解説をしっかりと理解することと、他の参考書やネット検索などで理解を深めることが大切です。
介護福祉士試験対策におすすめの独学勉強方法3選
介護福祉士国家試験対策におすすめの、独学勉強方法を3つ紹介します。
介護福祉士試験対策におすすめの独学勉強方法
- とにかく過去問を解き続ける
- Webサイトやスマホアプリを活用する
- YouTubeの勉強動画を活用する
それぞれ詳しい内容を解説するので、ぜひ参考にしてください。
とにかく過去問を解き続ける
学習ステップで紹介したように、介護福祉士国家試験の勉強法として「過去問を解き続ける」ことは非常に有効です。
なぜなら、過去問は試験本番に出題された問題で、当日の雰囲気を味わいながら学習を進められるからです。解説まで活用すれば、より濃い学習につながります。
また、過去問を解いていく中で、問題の傾向がわかってきます。たとえば、毎年のように出ている似た問題や、その年ごとに出る時事的な問題などに気づけます。
(介護福祉士)
一問一答ブックのようなものを活用し、1日数問程度でもいいので、必ず過去問に触れる時間を作ることで、継続的な学習につながり合格に近づけるでしょう。
Webサイトやスマホアプリを活用する
現在は無料で過去問が解けて、しかも解説まで付いている無料で使えるWebサイトやスマホアプリなどが数多くあります。
そのため、どうしてもお金をかけられないという方は、サイトやアプリを活用すればほとんどお金をかけずに介護福祉士の勉強が可能です。
スマホアプリであれば、通勤中や休憩中などのスキマ時間を有効活用できますし、参考書やノートを持ち運ぶ手間もなくなります。
(介護福祉士)
私が受験したときは15年以上まで、当時はアプリの普及も少なく、介護福祉士の国家試験に向けて活用できるWebサイトやスマホアプリはあまりありませんでした。
時代に合わせた学習ツールを使いこなし、試験合格を目指していきましょう!
YouTubeの勉強動画を活用する
YouTubeのコンテンツが増えていく中で、介護福祉士国家試験に向けた対策セミナーのような動画も数多く出てきています。
内容も豊富で、以下のようにさまざまなことを学べます。
なかにはラジオ感覚で聞き流して学べるものもあるため、手や目がほかのことで使えなくても、耳から介護福祉士国家試験を学べるので、ながら学習で時間を効率的に使えるのは大きなメリットでしょう。
介護福祉士国家試験に合格するために必要な勉強時間
介護福祉士国家試験に合格するために必要な勉強時間は、250時間ほどが目安と言われています。
そのため、1日1時間勉強すると想定した場合は、8ヶ月程度の勉強が必要となります。
仕事がある日は1時間程度で、休日にまとまった勉強時間を確保できるのであれば、試験の3ヶ月ほど前から勉強しても間に合うでしょう。
ただし、ぎりぎりで勉強を開始しようとすると焦ってしまったり、無理をして体調を崩したりする恐れがあるため。可能であれば試験の1年ほど前からコツコツ勉強するほうがいいでしょう。
私の場合は、試験当日のおよそ1年半年前から勉強を開始し、短い時間でも毎日積み重ねることに集中した結果、一発で合格できました。
介護福祉士国家試験に合格するための試験直前の過ごし方
介護福祉士国家試験に合格するためにも、試験直前は以下3つのことを意識しましょう。
- 前日は十分な睡眠をとる
- 試験直前は勉強よりもリラックスを優先する
- 試験当日は水分を摂りすぎない
それぞれ詳しい内容を見ていきましょう。
前日は十分な睡眠をとる
試験前日は、必ず十分な睡眠をとり、万全な状態で試験本番を迎えましょう。
もっともしてはいけないことは、試験前日に徹夜で勉強し無理やり知識を詰め込もうとすることです。前日に焦って勉強したところで、理解度は大きく変わりません。
それよりもとにかく体調を整えて、試験当日にこれまでの勉強の成果を最大限発揮できる状態にしておくことが何よりも重要です。
緊張して眠れない場合でも、横になっているだけで疲労はとれるので、眠れないからといって体は起こさず、布団の中でおとなしくしておきましょう。
どうしてもぎりぎりまで勉強したいという方は、前日はしっかり睡眠をとり、少し早めに起きて家を出る前に勉強するほうが頭は冴えるのでおすすめです。
試験直前は勉強よりもリラックスを優先する
試験当日に会場に着いたら、多くの人が参考書を持って必死に勉強している姿が目に入るでしょう。
周りが勉強しているから自分もしなきゃという気持ちで焦るかもしれませんが、直前の詰め込みはあまり意味がありません。
試験直前は前日と同じように、勉強よりもコンディションを整えることが大切です。そのため、ぎりぎりまで勉強するよりも好きな音楽を聴いたり、会場周辺を軽く散歩したりしながら、心身をリラックスさせるといいでしょう。
試験前日や当日に、勉強よりも体調管理に集中できるよう、それまでの学習期間はしっかりと勉強しておくことが重要になってきます。
(介護福祉士)
私の国家試験挑戦時には、前日は試験とは関係ないことを考えながらボーッと過ごすことで、当日はリラックスした状態で試験に臨めた経験があります。
直前に余裕を持てるようにするために、計画的に試験勉強を進めるとよいでしょう。
試験当日は水分を摂りすぎない
試験当日は水分の取り過ぎに注意してください。水分を摂りすぎていると、試験中にトイレに行きたくなる可能性があるからです。
試験官に申し出れば試験中にトイレにいくことは可能ですが、トイレに行った分、時間をロスしてしまうため避けたいところです。
またトイレの位置をあらかじめ確認しておき、試験本番までにトイレは早めに済ませておきましょう。
試験会場のトイレは混雑しやすく、自分が行きたいときにすぐに使用できない恐れがあります。トイレは早めに済ませ、水分を摂りすぎない状態で試験本番を迎えましょう。
(介護福祉士)
私は試験本番中にトイレに行きたくなったが、時間がもったいないので、我慢して試験を続けてお腹が痛くなった思い出があります。
受験生の皆様は、水分摂取をはじめとした体調管理には、十分気をつけてください。
介護福祉士国家試験の勉強方法に関するよくある質問
介護福祉士国家試験の勉強方法に関するよくある質問として、以下が挙げられます。
- 介護福祉士になるには何ヶ月勉強すればいい?
- 介護福祉士国家試験は過去問だけで合格できる?
- 介護福祉士国家試験に落ちたらどうなる?
上記の疑問に対し、それぞれ詳しく解説していきます。
介護福祉士になるには何ヶ月勉強すればいい?
本記事内でも触れたように、介護福祉士国家試験に合格するために必要な勉強時間は、250時間と言われています。
期間にすると、半年ほどを目安に勉強するといいでしょう。ただ1日に勉強できる時間は人それぞれ異なるため、できるだけ余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
3ヶ月程度勉強して合格できる方もいるようですが、試験当日に体調管理に時間をかけられるよう、早めに学習をスタートさせておくといいでしょう。
(介護福祉士)
私の場合は、試験日のおよそ1年半前から勉強を開始して、1日30分程度でもとにかく継続して勉強しました。
必要な勉強時間に対して、計画的な学習を継続することが重要になります。
介護福祉士国家試験は過去問だけで合格できる?
介護福祉士国家試験は、過去問だけを解く勉強方法でも十分合格可能です。
合格するための過去問を使った勉強方法は、以下の手順で行いましょう。
- まずは過去問を解く
- 正解した問題の解説を見て理解を深める
- 間違った問題の解説を見て理解し直す
- 可能であれば過去10年分を解く
- 毎日過去問を繰り返し問題に慣れる
- 問題を見るだけで解答がわかるくらい勉強する
(介護福祉士)
私もとにかく過去問を解き続けて勉強し、無事に合格できました。
過去問1年分を勉強できない日でも、一問一答のようなブックで数問過去問に触れる機会を作り、問題に触れない日を作らないよう継続したことで記憶が定着したと感じています。
介護福祉士国家試験に落ちたらどうなる?
万が一、介護福祉士国家試験に落ちたとしても、また次回以降に何度もチャレンジできるので心配いりません。
当然ですが、受験するすべての人が1回で合格したいと思っているでしょう。しかし、当日のコンディションや問題によって、惜しくも合格を逃してしまう可能性もあります。
そのため、「たとえ不合格だったとしてもまた受ければいい」という気持ちを持っておくことも大切です。
(介護福祉士)
絶対に合格しなければいけないという気持ちだけを持っていると、プレッシャーに感じて大きなストレスにつながる恐れもあります。
一発合格を目指しながらも、何度でも挑戦できるという気持ちを併せ持っておくこととよいでしょう。
介護福祉士国家試験に合格するための勉強方法まとめ
介護福祉士国家試験に向けた勉強方法には、独学や資格講座を利用するといった選択肢があります。
自分のペースでできるだけお金をかけずに勉強したい人は、独学が向いていますし、お金をかけて効率的に勉強したいという方は、資格講座を利用するのもいいでしょう。
独学で勉強する場合は、余計な参考書は購入せず、過去問と解説を活用することで、効果的な内容の濃い学習ができます。
現在は過去問を無料で解けるアプリも普及し、解説まで確認できるものもあるため、お金をかけない勉強方法でも十分合格は可能といえるでしょう。
ぜひ本記事で紹介している、介護福祉士国家試験の勉強方法を参考に、合格に近づいてください。