日本の労働力人口の減少に応じて外国人労働者が活躍するフィールドが増え、それに伴い「日本語教師」の需要が年々高まりを見せています。
日本語教育能力検定試験の合格は、国内の日本語学校で働くために求められる条件の一つです。本記事では、日本語能力検定試験の合格難易度やオススメの学習方法について解説していきます。
日本語教育能力検定試験とは?
日本語教育能力検定試験とは、日本語教師に求められる基礎的な知識・能力を備えているか証明する検定試験です。ここでは試験を受けるための条件や試験日程、出題範囲などを解説します。
日本語教師になるため必須条件の一つ
対個人のオンラインレッスンやボランティアとして日本語教師を行うには、実は資格は特に必要ありません。ただし、国内の日本語学校で勤務する場合には以下のいずれかを満たす必要があります。
- 日本語教育能力検定試験に合格
- 学士の学位(大卒)を持ち、日本語教師養成講座を修了
- 大学または大学院で日本語教育の主専攻もしくは副専攻として修了
日本語教育能力検定試験の合格は、この「日本語教師」になるための3つのルートのひとつです。
検定試験は誰でも受験可能
受験を受けるための条件などは特にありません。そのため、申し込みをすれば誰でも受験することが可能です。ただし、税込み14,500円の受験料がかかるため注意が必要です。
3つの科目で構成される試験
日本語教育能力検定は試験Ⅰ~Ⅲの3つの科目で構成されています。
科目 | 解答時間 | 配点 | 測定内容 |
試験Ⅰ | 90分 | 100点 | 原則として出題範囲の区分ごとの設問により,日本語教育の実践につながる基礎的な知識を測定する。 |
試験Ⅱ | 30分 | 40点 | 試験Ⅰで求められる「基礎的な知識」および試験Ⅲで求められる「基礎的な問題解決能力」について,音声を媒体とした出題形式で測定する。 |
試験Ⅲ | 120分 | 100点 | 原則として出題範囲の区分横断的な設問により,熟練した日本語教員の有する現場対応能力につながる基礎的な問題解決能力を測定する。 |
合計試験時間は240分(4時間)、合計得点は240点満点となっています。
実は合格基準については明確にされておらず、約158~165点が合格基準だと推定されています。
試験スケジュールについて
日本語能力検定試験の試験日程は以下の通りです。受験を検討している方は申し込み期日に遅れないように注意しましょう。
検定試験日は毎年10月
試験日は年に1回、毎年10月に行われます。2022年度の試験は10月23日(日)9:00~16:40の日時で行われます。出願受付は2022年7月4日(月)か~8月1日(月)のため、今年度の出願はすでに締め切っています。
毎年、試験申し込み可能な出願期間が約1か月と短くなっているので、出願が漏れないように注意しましょう!
合格発表日について
合格発表は例年受験日の約1か月ごとなっています。2022年度の試験結果発表は12月23日(金)を予定しています。
日本語教育能力検定試験の難易度は?
結論としては、日本語能力検定試験の難易度はかなり高めです。
要因の一つとして、試験範囲が「社会・文化・地域」、「言語と社会、」「言語と心理」「言語と教育」「言語」のように純粋な日本語能力だけではなく幅広く学ぶ必要があることが挙げられます。また、試験が年に1回しかないことも取得難易度を底上げしている要因の一つと言えます。
検定合格率の推移
下記は日本語能力検定試験の2011年以降の合格率推移になります。
年度 | 2011年 | 2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 |
応募者 | 7,034 | 5,877 | 5,439 | 5,436 | 5,920 | 6,167 | 7,331 | 8,586 | 11,699 | 11,316 | 10,216 |
合格者 | 1,527 | 1,109 | 1,001 | 1,027 | 1,086 | 1,231 | 1,463 | 1,937 | 2,659 | 2,613 | 2,465 |
合格率 | 21.7% | 18.9% | 18.4% | 18.9% | 18.3% | 20.0% | 20.0% | 22.6% | 22.7% | 23.1% | 24.1% |
これを見ると分かるように、合格率は基本的に20%弱~25%で推移しており、受験者の多くが不合格になる資格です。また、2021年度試験では「初回受験」の方は約63%となっており、約37%の方が「2回以上の挑戦」をしているということになります。
そのため、本気で日本語教師になりたいという方は、かなりの学習時間が必要といえます。
広い試験範囲が高難易度の要因
前述したように、日本語教育能力検定試験の難易度を高くしている要因の一つは「試験範囲の広さ」です。試験範囲は、令和4年度から変更になっており、以下が最新の試験範囲となっています。
日本語教育能力検定試験範囲(令和4年度以降版)
区分 | 主要項目 | |
社会・文化・地域 | ①世界と日本 | (1) 世界と日本の社会と文化 |
②異文化接触 | (2) 日本の在留外国人施策 | |
(3) 多文化共生(地域社会における共生) | ||
③日本語教育の歴史と現状 | (4) 日本語教育史 | |
(5) 言語政策 | ||
(6) 日本語の試験 | ||
(7) 世界と日本の日本語教育事情 | ||
言語と社会 | ④言語と社会の関係 | (8) 社会言語学 |
(9) 言語政策と「ことば」 | ||
⑤言語使用と社会 | (10) コミュニケーションストラテジー | |
(11) 待遇・敬意表現 | ||
(12) 言語・非言語行動 | ||
⑥異文化コミュニケーションと社会 | (13) 多文化・多言語主義 | |
言語と心理 | ⑦言語理解の過程 | (14) 談話理解 |
(15) 言語学習 | ||
⑧言語習得・発達 | (16) 習得過程(第一言語・第二言語) | |
(17) 学習ストラテジー | ||
⑨異文化理解と心理 | (18) 異文化受容・適応 | |
(19) 日本語の学習・教育の情意的側面 | ||
言語と教育 | ⑩言語教育法・実習 | (20) 日本語教師の資質・能力 |
(21) 日本語教育プログラムの理解と実践 | ||
(22) 教室・言語環境の設定 | ||
(23) コースデザイン | ||
(24) 教授法 | ||
(25) 教材分析・作成・開発 | ||
(26) 評価法 | ||
(27) 授業計画 | ||
(28) 教育実習 | ||
(29) 中間言語分析 | ||
(30) 授業分析・自己点検能力 | ||
(31) 目的・対象別日本語教育法 | ||
⑪異文化間教育とコミュニケーション教育 | (32) 異文化間教育 | |
(33) 異文化コミュニケーション | ||
(34) コミュニケーション教育 | ||
⑫言語教育と情報 | (35) 日本語教育とICT | |
(36) 著作権 | ||
言語 | ⑬言語の構造一般 | (37) 一般言語学 |
(38) 対照言語学 | ||
⑭日本語の構造 | (39) 日本語教育のための日本語分析 | |
(40) 日本語教育のための音韻・音声体系 | ||
(41) 日本語教育のための文字と表記 | ||
(42) 日本語教育のための形態・語彙体系 | ||
(43) 日本語教育のための文法体系 | ||
(44) 日本語教育のための意味体系 | ||
(45) 日本語教育のための語用論的規範 | ||
⑮言語研究 | ||
⑯コミュニケーション能力 | (46) 受容・理解能力 | |
(47) 言語運用能力 | ||
(48) 社会文化能力 | ||
(49) 対人関係能力 | ||
(50) 異文化調整能力 |
参照:日本国際教育支援協会「日本語教育能力検定試験の出題範囲の移行について」
「主要項目」が実に50に分かれる程の広さの試験範囲のため、試験難易度を底上げしている一因になっているようです。
日本語教育能力検定のおすすめ学習方法を解説
日本語教育能力検定について、「独学で合格を目指す方」と「より確実に合格を目指したい方」で学習方法は大きく異なってきます。
独学で合格を目指す
講座受講などを一切せずに検定合格を目指す方は、市販のテキストや過去問集を駆使して効率よく学習を行う必要があります。最もコストをかけずに可能な学習方法ですが、「モチベーションを保ちづらい」「正しい学習が出来ているか自分で把握しづらい」等のデメリットもあります。
自学自習の習慣がある方や、講座に通うことが出来な事情がある方は選択肢としてアリですが、より可能であれば「日本語教師養成講座」「検定対策講座」を受講するのがオススメです。
また、日本語教師として採用面接を受ける際は「模擬授業」が採用試験に組み込まれることが一般的ですが、「日本語教師養成講座」では実践的な授業のロープレを行うことも可能なため、日本語教師として働きたい方には特におすすめです。
検定対策の通信講座を利用する
前述したように、日本語教育能力検定は年に1回しか合格のチャンスの無い試験です。そのため、より確実に合格するには「検定試験対策講座」を受講するのがオススメです。各スクールによって内容は異なりますが、より効率的に学ぶことが可能なので、少しでも合格率を上げることが出来ます。
通信講座の対策講座であれば「420時間の日本語教師養成講座」よりは安価に受講できるため、「確実に合格したいがコストはそこまでかけられない・・・」という方にはオススメです。
本気で日本語教師を目指す方は養成講座がおすすめ
検定試験合格がゴールではなく、「日本語教師として活躍したい」という方には「日本語教師養成講座」を受講することがオススメです。
日本語教師養成講座は「日本語教師になるための3つのルート」のひとつです。
420時間単位という講座の中で、日本語教育能力検定の合格だけでなく、「より実践的な教育・指導能力」を身につけることが出来ます。学校によって特色があり、実際の留学生を相手に模擬授業をすることが可能な学校や、就職サポートが充実しているスクールなど、様々です。
講座の修了生は検定合格率が高い学校が多く、全国平均より2倍以上の合格率を出しているスクールもあります。
長期の講座になるうえ受講料金も高額になるので気軽に受講することはできないと思いますが、「本気で日本語教師になりたい」という方には日本語教師養成講座を受講することがオススメです。
もし興味がある方は、下記記事で主要なスクールの合格率や就職率をまとめていますので、是非参考にしてみてください。
日本語教師の年収は?
日本語教師を目指す方の中には、その収入面が気になっている方もいるのではないでしょうか?結論からお伝えすると、日本語教師の年収は高くも低くもありません。
文化庁が行った調査によると、日本語教師の年収で最も人数が多い収入帯は300万円~400万円未満となっています。
日本語教師の年収分布
「常勤」の日本語教師の年収別分布状況(人) | 100万円未満 | 100万円~200万円未満 | 200万円~300万円未満 | 300万円~400万円未満 | 400万円~500万円未満 | 500万円~600万円未満 | 600万円~700万円未満 | 700万円~800万円未満 | 800万円~900万円未満 | 900万円 ~1000万円未満 | 1000万円以上 |
全体 | 58 | 98 | 1,001 | 1,725 | 723 | 314 | 148 | 165 | 139 | 112 | 207 |
大学等 | 1 | 15 | 13 | 80 | 97 | 124 | 82 | 116 | 117 | 98 | 186 |
法務省告示校 | 7 | 36 | 747 | 1,295 | 469 | 136 | 41 | 31 | 11 | 10 | 14 |
専修学校・各種学校 | 6 | 9 | 73 | 114 | 41 | 18 | 12 | 6 | 3 | 1 | 3 |
地域日本語教室 | 16 | 7 | 22 | 37 | 9 | 14 | 5 | 0 | 1 | 0 | 0 |
その他の日本語教育機関 | 27 | 29 | 98 | 148 | 83 | 17 | 4 | 8 | 1 | 2 | 2 |
不明 | 1 | 2 | 48 | 51 | 24 | 5 | 4 | 4 | 6 | 1 | 2 |
これを見ると「大学等」で働く日本語教師は1000万円を超える収入の方が最も多くなっており、勤務する機関によって収入が大きく変わることが分かります。
また、上記の年収分布は「常勤」の勤務形態の方の調査となっていますが、「非常勤」の方や、フリーランスとしてオンラインでレッスンを行う方も多いため、日本語教師は自身の働き方次第で収入が変わる職業といえます。
日本語教育能力検定試験の難易度まとめ
まとめると、日本語教育能力検定の試験難易度はかなり高いと言えます。理由としては以下の3点です。
そのため、より確実に合格を目指したい方は「通信の対策講座」、さらに実践力を磨きたい方は「日本語教師養成講座」を受講することがオススメです。
日本語教師は条件さえ満たせば、年齢や経験に関係なく挑戦できる需要の高い仕事ですので、もし興味がある方は下記の記事から自分に合うスクールを探して説明会参加や資料請求を行いましょう!