国家資格である「登録日本語教員」が2024年4月に誕生したことで、日本語教師の仕事に興味を持っている人が増えているようです。
登録日本語教員の取得を検討している人にとって、試験の難易度や合格率は非常に気になるポイントといえるでしょう。
登録日本語教員の基礎試験の合格率はわずか9.3%と非常に難易度の高い試験となっているものの、試験ルートによっては、基礎試験をパスして受験することも可能です。
本記事では、登録日本語教員の難易度や合格率を、試験ルート、養成機関ルート、経過措置ルートの3つに分けて徹底解説していきます。
日本語教師の国家資格「登録日本語教員」とは何か
これから日本語教師を目指す方や現職の方にとって、2024年4月から始まった「登録日本語教員」という国家資格は、今後のキャリアに大きく影響する重要な制度です。
この資格はどのようなものなのか、その概要から取得が必要となるケース、旧資格との違いまで詳しく解説します。
2024年4月からスタートした国家資格「登録日本語教員」の概要
「登録日本語教員」は、2024年4月より施行された日本語教育の推進に関する法律(※)に基づいて創設された日本語教師の国家資格です。
※正式名称は「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」
「登録日本語教員」の国家資格は、専門的な知識と技能を持った日本語教師の質を保証し、日本語教育の水準を高めることを目的としています。
資格を取得するには、主に以下のルートがあります。
登録日本語教員の主な資格取得のルート
- 試験ルート
- 日本語教員試験(基礎試験・応用試験)に合格し、実践研修を修了する。
- 養成機関ルート
- 登録日本語教員養成機関で課程を修了し、応用試験に合格、実践研修を修了する
- 経過措置Cルート(2029年3月31日までの経過措置)
- 文部科学省認定の「必須の教育内容50項目に対応した日本語教員養成課程等」を修め、応用試験に合格する
(※学士以上の学位が必要)
「経過措置ルート」「養成機関ルート」の場合は基礎試験が免除されますが、「試験ルート」の場合は免除科目がありません。
基礎試験は難易度が非常に高く、特に「試験ルート」で受験した場合の合格率はわずか8.8%(2024年度実績)と、かなり低い水準となっています。
参照:文部科学省「令和6年度日本語教員試験実施結果について」

確実に日本語教師を目指すなら、登録日本語教員養成機関の講習を受講し、養成機関ルートで試験に挑戦する方が望ましいでしょう。
登録日本語教員資格が必要となるケース
文部科学大臣の認定を受けた認定日本語教育機関で教える場合、登録日本語教員の資格が必要になります。
参照:日本語教育機関認定法ポータル「認定日本語教育機関案内」
また、就労ビザを取得して海外で日本語教師として働く場合にも、この資格があると有利になります。
また、将来的には、公的な日本語教育機関や大学など、様々な教育現場で登録日本語教員の資格が重視されるようになると予想されています。

個人で日本語を教える場合や、非営利活動として日本語を教える場合には、必ずしも登録日本語教員の資格は必要ありません。
ですが、自身の日本語教育における専門性を証明する資格として、取得する価値は十分にあるといえるでしょう。
旧資格制度との違いと移行期間について
登録日本語教員の資格が生まれる以前の制度では、主に以下の3つの方法で日本語教師の資格を取得することができました。
旧制度における日本語教師資格の取得方法
- 「日本語教師養成講座」(420単位時間以上)の修了
- 「日本語教育能力検定試験」の合格
- 大学で日本語教育を専攻し、必要な単位を取得して卒業
新制度では、これらの資格は直接的には「登録日本語教員」として認められませんが、現職者の場合は経過措置として、2029年3月31日までは国家資格が無くても認定日本語教育機関で働くことが可能です。
参照:文部科学省「経過措置に関する日本語教育機関の指定について」
この経過措置期間内に一定の条件を満たせば、経過措置ルートで登録日本語教員の資格を取得可能です。
例えば、日本語教師養成講座講座(420時間以上)修了者で、一定の実務経験がある方は、基礎試験が免除され、応用試験のみの受験で資格取得が可能なケースがあります。
この経過措置は現職者の円滑な国家資格取得を支援するための仕組みですが、期限があるため早めの対応が望ましいでしょう。
日本語教師を目指す方は、この新しい国家資格制度をしっかり理解し、自分に合った取得ルートを選択することが重要です。次のセクションでは、各取得ルートの難易度や合格率を詳しく比較していきます。
日本語教師の国家資格取得ルート別難易度・合格率を比較
日本語教師の国家資格である「登録日本語教員」には複数の取得ルートがあり、それぞれ難易度や合格率が異なります。
なぜなら、どのルートでも求められるスキルの水準は同じですが、ルートによっては試験や研修の一部が免除される場合があるためです(以下表参照)。
主な試験ルート | 基礎試験 | 応用試験 | 実践研修 |
試験ルート(独学) | 合格が必要 | 合格が必要 | 合格が必要 |
養成機関ルート | 免除 | 合格が必要 | 登録実践研修機関で課程を修了した場合は免除 |
経過措置Cルート | 免除 | 合格が必要 | 免除 |
ここでは、上表の主な資格取得ルート毎のの難易度と合格率について解説していきます。
試験ルート(独学)の難易度・合格率と特徴
試験ルートは、養成機関に通わず独学で登録日本語教員を目指す方法です。2024年の試験結果によると、この独学ルートの合格率はわずか8.7%と非常に厳しい数字になっています。
基礎試験合格率 | 応用試験合格率 | 全体合格率 | |
2024年度 | 8.8% | 99.7% | 8.7% |
参照:文部科学省「令和6年度日本語教員試験実施結果について」
特に基礎試験の合格率は低く、受験生の91.2%が不合格となったのに対し、応用試験まで進んだ受験性の99.7%は合格という結果になりました(以下図を参照)。
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「試験ルート」の受験では、以下のステップを踏む必要があります。
登録日本語教員の「試験ルート」の資格取得ステップ
- 基礎試験に合格する(合格率9.3%)
- 応用試験に合格する
- 実践研修を修了する
特に基礎試験の難易度が高い理由として、以下の2点が挙げられます。
興味深いことに、基礎試験に合格した人の99.7%が応用試験にも合格しており、基礎試験の壁さえ越えれば、応用試験はほぼ確実に突破できると言えます。
このルートの最大のメリットは費用が比較的抑えられることですが、試験の難易度が高く、年に1回しか受験機会がないという大きなデメリットがあります。

日本語教師養成講座などを受講しなくても国家試験に挑戦できるのはメリットといえますが、応用試験に合格後は登録実践研修機関で「実践研修」を受けなければなりません。

国家資格取得までの効率を考えると、登録実践研修機関と登録日本語教員養成機関の双方の登録を受けているスクールで学び、「養成機関ルート」で受験した方が、より確実に合格を目指せるといえるでしょう。
養成機関ルートの難易度・合格率と特徴
養成機関ルートは、登録日本語教員養成機関で必要な課程を修了することで、難関である基礎試験が免除されるルートです。
2024年の試験出願時点では、「登録日本語教員養成機関」が存在しなかったため、養成機関ルートでの受験の実績はまだありません。
基礎試験合格率 | 応用試験合格率 | |
2024年度 | 免除 | 受験者無し |
参照:文部科学省「令和6年度日本語教員試験実施結果について」
ですが、経過措置ルートにおける基礎試験免除者の応用試験合格率は61.0%となっていることから、今後は養成機関ルートにおいても同等の合格率が想定されるでしょう。
養成機関ルートで登録日本語教員の資格を取得するためのステップは以下の通りです。
登録日本語教員の「養成機関ルート」の資格取得ステップ
- 登録日本語教員養成機関で課程を修了する
- 応用試験に合格する
- 実践研修を修了する(※)
※登録日本語教員養成機関が登録実践研修機関を兼ねている場合は実質免除
養成機関ルートの最大のメリットは、基礎試験が免除されるため資格取得の確実性が高まることです。
また、登録日本語教員養成機関で専門的な指導を受けられるため、知識やスキルを体系的に身につけられます。
デメリットとしては、受講費用がかかること(50~70万円程度)と、最低でも3~6ヶ月以上の学習期間が必要なことが挙げられます。

これから日本語教師を目指そうと考えている人にとって、養成機関ルートが最も確実かつ現実的な受験ルートといえるでしょう。
経過措置Cルートの難易度・合格率と特徴
経過措置Cルートは、文部科学省より「必須の50項目に対応した日本語教員養成課程等」として認定された養成機関で課程を修めることで、基礎試験と実践研修が免除されるルートです。
参照:文部科学省「登録日本語教員の資格取得に係る経過措置における日本語教員養成課程等の確認について」
2024年のこのルートによる合格率は60.8%となっています。
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基礎試験合格率 | 応用試験合格率 | |
2024年度 | 免除 | 60.8% |
参照:文部科学省「令和6年度日本語教員試験実施結果について」
経過措置Cルートで登録日本語教員を目指す際の流れは以下の通りです。
登録日本語教員の「経過措置Cルート」の資格取得ステップ
- 必須の50項目の実施が確認された養成課程を修了する
- 応用試験のみに合格する(合格率約61%)
- 基礎試験と実践研修が免除される
経過措置Cルートは、学士(大卒)以上が対象で、令和15年(2033年)3月31日までの期間限定措置です。現職者に限らず、未経験者でも活用できる点が大きなメリットです。
また、2029年3月31日までに日本語教員として1年以上勤務した経験がある現職者(※)の場合、経過措置でD~Fルートの受験が可能となります。該当者は、文部科学省の「登録日本語教員の登録申請の手引き」を確認しておきましょう。
平成31年4月1日(法施行5年前)~令和11年3月31日(法施行5年後)の間に法務省告示機関で告示を受けた課程、大学、認定日本語教育機関で認定を受けた課程、文部科学大臣が指定した日本語教育機関(認定を受けた日本語教育機関が過去に実施した課程)で日本語教員として1年以上勤務した者

これから日本語教師を目指す人にとって、経過措置Cルートは最も一般的な国家資格取得方法といえるでしょう。
当該ルートで日本語教師を目指す人は、まずは「必須の50項目の実施が確認」された養成機関(大学や社会人向けスクール)を探すようにしましょう。
各ルートのメリット・デメリットを徹底比較
「試験ルート」「養成機関ルート」「経過措置ルート」の3つの資格取得方法を総合的に比較すると、以下のような特徴があります。

自分の状況や条件によって最適なルートは異なりますが、基礎試験の難易度の高さを踏まえると、時間と費用に余裕がある方は「養成機関ルート」または「経過措置Cルート」を選ぶことで、資格取得の可能性を大きく高められるでしょう。

これから日本語教師を目指す場合は、「登録実践研修機関」と「登録日本語教員養成機関」の両方の
登録を受けたスクールで学び、「養成機関ルート」で受験するのがおすすめです。

現職者の場合は、まずは経過措置Cルートの対象になっているかどうかを確認し、「必須の教育内容50項目対応の養成課程」を修了していない場合は、D~Fルートのいずれかで挑戦しましょう。
日本語教師国家資格試験の難易度・合格率の分析と所感
日本語教員試験の難易度を正しく理解するためには、単に公表された合格率の数字を見ただけで判断するのではなく、その背景やデータを深く読み解くことが大切です。
そこで今回は、試験の難易度を把握するために、合格率データを以下の観点から多角的に検証していきます。
2024年試験の全体合格率62.6%の真実
2024年(令和6年)に実施された日本語教員試験の全体合格率は62.6%と発表されています。一見すると比較的高い合格率に思えますが、この数字には重要な注意点があります。
この合格率には、経過措置による「基礎試験免除者」や「全試験免除者」も含まれており、それぞれの合格率は以下のようになっています。
受験生の内訳 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
全試験受験者 (基礎試験+応用試験) | 3,947人 | 366人 | 9.3% |
基礎試験免除者 (応用試験のみ受験) | 7,750人 | 4,727人 | 61.0% |
全試験免除者 | 5,958人 | 5,958人 | 100% |
総計 | 17,655人 | 11,051人 | 62.6% |
参照:文部科学省「令和6年度日本語教員試験実施結果」
上表を密と分かるように、実際に「試験ルート」、つまり基礎試験から応用試験まですべてを受験した人たちだけを見ると、合格率はわずか9.3%まで下がります。
また、基礎試験が免除によって応用試験のみ受験した人の合格率は61%となっており、この数字こそが、一般の受験者にとっての真の難易度を表していると言えるでしょう。

基礎試験から受験する場合の合格率はおよそ10%前後、応用試験のみを受験する場合は約60%前後が目安となります。
それぞれの試験における難易度の違いをあらかじめ理解しておきましょう。
基礎試験合格率9.3%の壁を突破するには
日本語教員試験の中で最も高い壁となっているのが基礎試験です。全体での基礎試験合格率はわずか9.3%と、非常に厳しい数字となっています。

試験ルート | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
試験ルート | 3,681 | 323 | 8.8% |
経過措置Fルート | 266 | 44 | 16.5% |
総計 | 3,947 | 367 | 9.3% |
参照:文部科学省「令和6年度日本語教員試験実施結果」
合格率が低くなっている主な要因としては、以下のように合格基準が高く設定されていることが挙げられます。
特に2つ目の条件が大きな障壁となっています。たとえ総合得点で80点を超えていても、1つの区分でも60%に満たない場合は不合格となってしまいます。
基礎試験を突破するためには、苦手分野を作らない体系的な学習計画を立て、5つの区分をバランスよく学習する必要があります。
基礎試験の難しさを考えると、養成機関ルートを選択して基礎試験の免除目指す方が、より確実に資格を取得できる現実的な戦略と言えるでしょう。

1年以上の実務経験がある「経過措置Fルート」の受験生であっても、合格率はわずか16.5%にとどまっています。
このことからも、これから日本語教師を目指す方は、応用試験の免除が受けられる「養成機関ルート」や「経過措置Cルート」を選ぶ方が、より確実といえるでしょう。
応用試験の合格率と対策ポイント
応用試験の全体合格率は61.1%と、基礎試験と比較すると大幅に高くなっています。
さらに興味深いのは、試験ルートにおいて基礎試験合格者の応用試験合格率が99.7%(2024年度)と、ほぼ100%に近いことです。
>「試験ルート」の難易度・合格率と特徴は本記事のこちらで解説
このデータから、基礎試験を突破できるほどの実力があれば、応用試験はほぼ確実に合格できることがわかります。一方で、基礎試験が免除された受験者の応用試験合格率は61.0%となっており、一定の試験対策は必要です。
応用試験の合格基準点は総合得点の6割で、区分ごとの基準点(足きり)はないため、基礎試験よりも合格しやすい設計になっています。ですが、決して油断はできません。
特に経過措置Cルートや養成機関ルートで応用試験のみを受験する場合は、合格率約61%という数字を念頭に置き、しっかりとした対策が必要です。

応用試験のみ受験する場合であっても、より確実な合格を目指す際は試験対策講座などを利用するといいでしょう。
日本語教育能力検定試験との難易度・合格率を比較
日本語教育能力検定試験は、登録日本語教員が国家資格化される前から存在する試験で、日本語教師としての知識や能力を測るものです。
日本語教育能力検定試験と登録日本語教員の合格率は、それぞれ以下の通りです。
合格率(2024年度試験) | |
---|---|
日本語教育能力検定試験 | 31.0% |
登録日本語教員(基礎試験+応用試験) | 9.3% |
合格率だけを見ると、日本語教員試験(基礎試験+応用試験)は、日本語教育能力検定試験と比較して約3倍難しいという計算になります。一方、応用試験のみの合格率(61.0%)は日本語教育能力検定試験よりも高くなっています。
以上のデータから、登録日本語教員の資格取得において最大の障壁は基礎試験であり、この試験を免除してもらえるルートさえ選べば、日本語教育能力検定試験より容易に資格を取得できるといえるでしょう。
難易度が高い日本語教師の国家資格を攻略する方法
登録日本語教員の資格取得が難しいことは、これまでのデータ分析から明らかになりました。しかし、適切な方法と戦略を選べば、効率的に資格を取得することは十分可能です。
ここでは、高い難易度を乗り越えて登録日本語教員になるための具体的な方法として、以下の3つを解説していきます。
試験対策講座を活用する
独学で試験ルートを選択する場合でも、試験対策講座を利用することで合格率を大幅に上げることができます。
養成機関や経過措置Cルートで学ぶ場合は不要ですが、「試験ルート」で基礎試験を受験する場合、合格率の低さを考えると、専門家による指導を受けることは非常に効果的といえるでしょう。
登録日本語教師の試験対策はオンラインで実施されることが多く、会社員として働きつつ、空き時間に学ぶことが可能です。
特に、アガルートの日本語教員試験対策は2024年度試験の合格率が、全国平均の4.7倍(43.75%)と高い実績を誇っており、おすすめの講座のひとつといえるでしょう。

養成機関に通わず、独学を中心に「試験ルート」で登録日本語教員の試験に挑戦する場合は、オンライン講座を活用して対策を進めておきましょう。
登録日本語教員養成機関で学ぶ
最も確実に資格を取得するためには、登録日本語教員養成機関での学習がおすすめです。この方法を選ぶと、難関の基礎試験が免除され、応用試験のみの受験で済みます。
登録日本語教員の養成機関で学ぶ主なメリットは以下の通りです。
養成機関で学ぶメリット
- 基礎試験免除により合格率が大幅に上がる
- 体系的なカリキュラムで日本語教育に必要な知識とスキルを効率的に習得できる
- 専門家の指導を受けられるため、質問や疑問点をすぐに解決できる
- 同じ目標を持つ仲間との学び合いができる
養成機関は費用(一般的に50~70万円)と時間(6か月以上)がかかりますが、資格取得の確実性を考えると、最も効率的な投資のひとつと言えるでしょう。
特に登録実践研修機関も兼ねている養成機関を選べば、実践研修も同時に実施できるため、さらに効率よく資格取得を目指せるでしょう。

ま文部科学省の「日本語教育機関の評価制度」では、日本語教師の質が評価対象となるため、機関側も優秀な登録日本語教員の採用を重視するようになっています。
そのため、養成機関で学ぶことは就職においても有利に働くでしょう。
経過措置Cルートを目指す
四年制大学を卒業している方にとって、経過措置Cルートは非常に魅力的な選択肢です。
このルートでは、文部科学省認定の「必須の教育内容50項目に対応した日本語教員養成課程等」を修めることで、基礎試験と実践研修が免除され、応用試験のみの合格で登録日本語教員の資格を取得できます。
経過措置Cルートのメリットは以下の通りです。
経過措置Cルートのメリット
- 基礎試験と実践研修が免除される
- 応用試験のみの受験で済む
ただし、このルートは令和15年(2033年)3月31日までの期間限定措置であり、学士(四年制大学卒業)以上であることが条件です。条件に該当する方は、この期間を有効活用することをおすすめします。
難易度の高い登録日本語教員の資格取得には、自分の状況や条件に合わせた最適なルート選びが重要です。時間と費用を考慮しながら、確実に合格できる方法を選択しましょう。
登録日本語教員養成機関の選び方
登録日本語教員の養成機関で学ぶ場合、自身に合った講座や学校を選ぶことが重要です。
様々な大学や社会人向けスクールが登録日本語教員養成機関として登録(※)されており、自力で最適な講座を選ぶのは非常に困難です。
※2024年第1回の登録日本語教員養成機関の登録は34件
そこで、ここからは養成機関を選ぶ際の重要なポイントは以下の通りです。
それぞれ詳しく解説していきます。
登録実践研修機関を兼ねたスクールを選ぶ
登録日本語教員の資格取得には、原則として「実践研修」の修了も必要です。
ですが、養成機関の中でも登録実践研修機関の両方の登録を受けているスクールを選ぶことで、より効率的に登録日本語教員の資格を取得することができます。
日本語教員養成機関と 登録実践研修機関の両方の登録があるスクール | 日本語教員養成機関のみ登録があるスクール | |
基礎試験 | 免除 | 免除 |
応用試験 | 合格が必要 | 合格が必要 |
実践研修 | 養成課程で実施するため実質免除 | 必要 |
養成機関の中でも、登録実践研修機関としても登録されたスクールを選ぶメリットは以下の通りです。
経過措置Cルートのメリット
- 養成機関で実践研修まで受けられる
- 応用試験合格後に登録実践研修機関を探す手間が省ける
- カリキュラムが一貫しているため学習効率が良い
実践研修は資格取得の最終ステップとなるため、養成課程と実践研修を同一機関で完結できれば、スムーズに資格取得を進められます。養成機関を調査する際は、まずこの点を確認することをおすすめします。

社会人から日本語教師を目指す場合は、登録実践研修機関としての登録有無は必ずチェックしておきましょう。
日本語教員試験の合格実績が高いスクールを選ぶ
養成機関を選ぶ際には、その機関からの日本語教員試験合格者数や合格率を確認することが重要です。特に応用試験の合格実績は、教育の質を示す重要な指標となります。
日本語教員養成機関の確認すべきポイント
- 過去の応用試験合格率
- 合格者の体験談や口コミ
- カリキュラムの充実度と試験対策の内容
- 講師陣の経験と専門性
ただし、2024年度の第1回試験においては、まだ養成機関の登録が確定する前だったため、現状は合格実績が出ているスクールはありません。そのため、それ以外の要素で判断するようにしましょう。
また、スクール選びの際には、総合的な資格スクールと日本語学校付属のスクールの違いも考慮すると良いでしょう。
総合的な資格スクールは幅広い知識を提供できる一方、日本語学校付属のスクールは実践的な教育に強みがある傾向があります。

今後、日本語教員養成機関同士の競争が激しくなるにつれ、「応用試験の対策」などがセットになった講座が開講される可能性があります。
登録日本語教員の試験合格までを見据えて、自分にとって最適なスクールを選ぶことが大切です。
教育訓練給付金の対象講座から選ぶ
日本語教員養成講座の受講費用は決して安くはありません。そこで活用したいのが「教育訓練給付金」制度です。
この制度を利用すれば、受講費用の一部が後から支給されるため、経済的負担を大幅に軽減できます。
日本語教師の養成講座において、対象となっている給付金は「一般教育訓練給付金」「特定一般教育訓練給付金」の2種類となっており、それぞれの給付金の支給金額は以下の通りです。
- 一般教育訓練給付金
- 受講料の20%(上限10万円)が受講終了後に支給。
- 特定一般教育訓練給付金
- 受講料の40%(上限20万円)が受講終了後に支給。
ただし、給付金を受けるには条件がありますので、事前に自分が対象となるかを確認し、対象講座を提供している養成機関を選ぶと良いでしょう。
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業の対象講座から選ぶ
近年注目されている「リスキリング」支援制度も、登録日本語教員養成機関選びの際に考慮すべき重要なポイントです。
リスキリングとは、新しい職業に必要なスキルを身につけるための学び直しを指し、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」を活用すれば、受講料の最大70%(上限56万円)の支給を受けることが出来ます。
特に異業種から日本語教師へのキャリアチェンジを考えている方には、リスキリング支援対象の講座がおすすめです。この制度を活用することで、より少ない経済的負担で質の高い教育を受けることができるでしょう。
日本語教師の国家資格「登録日本語教員」取得後のキャリアプラン
登録日本語教員の資格を取得したあとは、どのようなキャリアを築くことができるのでしょうか。
ここkらは、難関試験を突破して手に入れた国家資格を活かすためのキャリアプランや将来性について解説します。
登録日本語教員の需要と将来性
日本語教師、特に登録日本語教員の需要は今後ますます高まると予想されています。
理由の一つに、外国人労働者の増加が挙げられます。日本では、少子高齢化に伴う労働力不足を補うため、日本政府は外国人労働者の受け入れを拡大しています。これに伴い、日本語教育へのニーズが高まっています。
また、日本語教育の質を高めるために、経過措置期間が終了すると、認定日本語教育機関では「登録日本語教員」の資格がなければ、日本語教師として勤務できなくなります。
このことから、登録日本語教員の需要は高まり続けると予想されます。

国家資格の創設は、日本語教師の社会的地位と専門性の向上にもつながるため、資格保持者の価値は今後さらに高まると考えられるでしょう。
>なぜ「日本語教師はやめとけ」といわれるのか?将来性を徹底解説
資格取得後の具体的な就職先
登録日本語教員の資格を取得することで、認定日本語教育機関として認定された日本語学校で教師として働くことができます。
また、日本語教師の国家資格を取得することで、以下のような就職先の選択肢を得ることが可能になります。
資格取得後の具体的な就職先
- 大学・専門学校
- 企業内日本語教師
- 外国人向けの研修講師
- オンライン日本語教師
- 海外の教育機関
登録日本語教員の資格を持っていると、特に法務省告示機関や認定日本語教育機関での採用において有利になります。さらにキャリアを進め、主任教員やカリキュラム開発者、教材作成者などの専門職に進むこともできます。

法律上は、登録日本語教員の資格が不要な職場であっても、国家資格を取得していることで採用選考の際に有利になる可能性は高いといえるでしょう。
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日本語教師の年収
日本語教師の収入は勤務形態や勤務先、経験によって大きく異なるものの、年収は決して高くはありません。一般的な目安は以下の通りです。
日本語教師の収入・年収例
- 常勤(専任教員):年収300万円〜500万円程度
※大学では500万円以上の場合もある - 非常勤講師:時給2,000円〜3,500円程度
登録日本語教員の資格を持つことで、より高い報酬を得られる可能性が高まります。特に国家資格制度が定着するにつれて、資格保持者と非保持者の給与差は広がると予想されています。
また、キャリアの幅を広げるために、日本語教育能力検定試験など他の関連資格を追加で取得したり、専門分野(ビジネス日本語、介護日本語など)に特化したりすることで、より高い収入を目指すことも可能です。
また、オンラインプラットフォームを活用して副業として日本語を教えることで、収入をさらに増やすことも可能です。

日本語教師としての仕事hそのやりがいに反し、収入は決して高くはありません。
そのため、本業として常勤教師として働きつつ、副業で非常勤講師やオンラインで日本語を教えている人も少なくありません。
日本語教師の国家資格「登録日本語教員」の難易度・合格率まとめ
本記事では、2024年4月からスタートした日本語教師の国家資格「登録日本語教員」の難易度や合格率について詳しく解説してきました。
資格取得後は、認定日本語教育機関をはじめとする様々な場所で活躍できる道が開けています。国家資格の導入により、日本語教師の社会的地位と専門性は今後ますます向上していくことが期待されます。
登録日本語教員の資格取得は容易ではありませんが、取得ルートを適切に選択し、効率的な学習計画を立てることで、十分に達成可能な目標です。自分の状況や条件に合った最適な道を選び、着実に歩みを進めていきましょう。